君はまだ甘い!
そんな二人の様子を訝しく思いながらも、マヤは洒落たトッピングが施されたアイスココアを飲んで、ホッと一息ついた。

ルイによると、あれから帝王はゲームに入ってきてはいない。
ルイは相変わらずキョロちゃんたちと遊んでいるようで、マヤは聞いていなかったが、トオルも時々入っているらしい。
「マヤもまた入ってきたら?」

「そうやね」

「んじゃ、早速今晩からな!あ、今晩は・・・アレ、か」

ルイはニヤニヤしながらマヤとトオルを交互に見る。
いきなりガタン!と音がした。

隣に座っていたトオルが立ちあがり、向かいのルイの顔に両手を伸ばしたかと思うと、ルイの両頬を両手でぐいーっと引っ張った。

「いだだだっ!!」

マヤが呆気に取られながらトオルを見上げると、その顔は耳まで赤くなっていた。

同年代の二人はすっかり仲良くなったようだが、トオルの絡み方はやはり独特だなーと思った。

「んじゃまた、オンラインでな!」

両頬に左右対称の赤いあざを付けたルイは、にこやかにそう言って、カフェの前で別れ、マヤたちは帰路についた。


マヤのアパートの前に到着し、礼を言って車を降りようとドアに手をかけた時、

「あの・・・」

と、トオルが引き止める。

「7月に試合が地元であるんですが、マヤさんに観に来てほしいんです…」

「名古屋で?関係者以外でも観れるの?」

「ええ。大学時代の友人とかもよく来ますよ。ユカちゃんも一緒にどうでしょうか?前にバスケの試合が観たいって言ってましたし」

マヤもトオルのプレイは一度観てみたいと思っていたので、即OKした。

しかし、そこでまた一波乱起きることを、この時のマヤは知る由も無かった。
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