君はまだ甘い!
ゲームの腕前に関して、トオルの言葉はウソではなかった。
何でも、2週間程前に始めたばかりで、まだ操作に不慣れな上、ゲームができるのは1〜2週間に一度程度だそうだ。

「仕事が”肉体労働”で夜は疲れて寝てしまうことが多い」
「週末も出勤することが多い」

と話していた。


一方、マヤは曲がりなりにも、一人用モードではコンプリートを果たし、プレイ歴も夫がいた時と合わせると1年以上になる。
しかし、ゲームオタクで百戦錬磨のルイ達には全く歯が立たず、対戦成績は下位の常連だった。
ルイには、

「○○はそれでええねん。おもろいから」

と、意味のわからない持論で慰められ、そのたび、周囲からぶっと笑い声が聞こえてくるのだった。
たかだかゲームの勝敗とは言え、元来負けず嫌いのマヤは、負け方によっては、解散して電源を切った後もイライラが消えず、深夜にヤケ酒を呑むことすらあった。

そんなマヤとトオルは、すぐに最下位争いをするライバルになった。
いくら何でも初心者の彼に負けることはないだろうと思っていたので、正直モチベーションが下がった。
感情が顔にすぐ出る質(たち)であるが、相手には見えないので、隠す必要もなかった。

「あの~、○○さん、怒ってます?」
< 7 / 82 >

この作品をシェア

pagetop