君はまだ甘い!
「これ、誕生日プレゼント」

「え、マジですか!嬉しい」

満面の笑みでトオルはその小さな紙袋を受け取った。

「開けていいですか?」

マヤが頷くと、20センチほどの長さの箱を取り出し、包装紙を丁寧に外していく。

「わ、サングラス」

意外そうな顔でトオルがそれを箱から出した。

「私、センスが無いから、店員さんに選んでもらったの」

店員が、顎がシャープな小顔のトオルには、ラウンドタイプが似合うと、アドバイスをくれた。
色白なら黒のフレームがいい、とも。濃い色のレンズはマヤが選んだ。

トオルが自分の顔にかけてみる。

マヤは思わず息を呑んだ。

(似合い過ぎでしょ!店員さん、さすがだわ…)

「よ、よく似合ってる。良かった」

「そうですか?オレ、サングラスは持ってなかったので、嬉しいです!」

綺麗に揃った前歯を見せて、にっこりとほほ笑む。

その眩しさに目を瞠りながらも、おずおずと切り出した。

「あのね、それを選んだのには理由があって…」

まるで外国映画の主人公に見つめられているような感覚に陥りながら、マヤは続けた。

「これからトオルくんはプロバスケットボール選手になって、絶対有名になるわけだし…。私とデートするときに、その、バレないように、と・・・」

言いながらどんどん顔が熱くなるのがわかる。

「それって、マヤさん…?」

つくづくいい年をして情けないと思うが、恋愛なんて久しぶりなんだから仕方ない、と心の中で開き直る。

トオルはサングラスを外すと、テーブルの上に静かに置いた。

「マヤさん、夜景はもういいや!」

そう言うと、トオルはおもむろに立ち上がった。
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