君はまだ甘い!
「結婚してください」
7月の3回目のデートは、マヤが名古屋に出向いた。
猛暑の中、名古屋城など、一通りの名古屋観光を済ませ、トオルのマンションのリビングのソファで、トオルが淹れてくれた冷たい麦茶を飲んで一息付いた時だった。
10月にいよいよプロとしてのキャリアを踏み出すトオルは、二人の未来についても結論を導き出していた。
「オレの奥さんになって、オレを支えてほしい。もちろん、オレもマヤとユカを支える。家族ができたら覚悟が決まるっていうか…。それで、子供も作って、さらに父親として責任感も…」
少し顔を赤らめて頭を掻いている姿が可愛らしいが、ぼそぼそと消え入るような最後の言葉を聞き逃さなかった。
「ちょ、ちょっと待って!」
マヤは、トオルとの結婚を考えていなかったわけではない。
それほどトオルに惹かれていたし、心から信頼していた。
しかし、その前にどうしても解決しなければならない、一つの危惧があった。
「トオルさ、やっぱり子供欲しい?」
「もちろん!」
即答するトオルの無邪気な笑顔に、秘かに抱いていた罪悪感が蘇る。
43歳になって、これから子供を生むことは難しいと思う。
でも、トオルは27歳。子供を欲しいと思うのは当然だし、トオルの家族、何より両親は孫の顔を見るという、人並みの未来を描いているに違いない。
でも自分と一緒になれば、その当たり前の選択肢がなくなる。
「だったら…」
マヤはソファから立ち上がった。
「結婚はできない」
座ったままのトオルに視線を合わせる。
「え!なんで?」
トオルも立ち上がった。
「だって、私はもう子供産めないもん。子供を望むなら、年相応の女性を選ばないと」
早くも訪れた別れの予感に、気持ちが追い付かないまま言葉だけが先走る。
「マヤ以外の女性となんて、もう考えられないよ、オレ」
トオルは拳を握りしめて、マヤを見ている。
「こんなに好きなのに、なんでそんなこと言うの」
切ない顔をするが、マヤの心には響かなかった。
若いな、と思う。
そして、僅かな苛立ちが芽生えた。
7月の3回目のデートは、マヤが名古屋に出向いた。
猛暑の中、名古屋城など、一通りの名古屋観光を済ませ、トオルのマンションのリビングのソファで、トオルが淹れてくれた冷たい麦茶を飲んで一息付いた時だった。
10月にいよいよプロとしてのキャリアを踏み出すトオルは、二人の未来についても結論を導き出していた。
「オレの奥さんになって、オレを支えてほしい。もちろん、オレもマヤとユカを支える。家族ができたら覚悟が決まるっていうか…。それで、子供も作って、さらに父親として責任感も…」
少し顔を赤らめて頭を掻いている姿が可愛らしいが、ぼそぼそと消え入るような最後の言葉を聞き逃さなかった。
「ちょ、ちょっと待って!」
マヤは、トオルとの結婚を考えていなかったわけではない。
それほどトオルに惹かれていたし、心から信頼していた。
しかし、その前にどうしても解決しなければならない、一つの危惧があった。
「トオルさ、やっぱり子供欲しい?」
「もちろん!」
即答するトオルの無邪気な笑顔に、秘かに抱いていた罪悪感が蘇る。
43歳になって、これから子供を生むことは難しいと思う。
でも、トオルは27歳。子供を欲しいと思うのは当然だし、トオルの家族、何より両親は孫の顔を見るという、人並みの未来を描いているに違いない。
でも自分と一緒になれば、その当たり前の選択肢がなくなる。
「だったら…」
マヤはソファから立ち上がった。
「結婚はできない」
座ったままのトオルに視線を合わせる。
「え!なんで?」
トオルも立ち上がった。
「だって、私はもう子供産めないもん。子供を望むなら、年相応の女性を選ばないと」
早くも訪れた別れの予感に、気持ちが追い付かないまま言葉だけが先走る。
「マヤ以外の女性となんて、もう考えられないよ、オレ」
トオルは拳を握りしめて、マヤを見ている。
「こんなに好きなのに、なんでそんなこと言うの」
切ない顔をするが、マヤの心には響かなかった。
若いな、と思う。
そして、僅かな苛立ちが芽生えた。