君の熱で甘く、溶ける。
「ごめん、悪気はなかったんだけど」


「ふふ、分かってるよ。許します」


「え、ほんと?ありがと」


とびきりの笑顔に胸がきゅん、と鳴る。その大きな身体に反してわんこみたいな人懐こさが心臓に悪いからやめてほしい。ほんとに逢坂くんは男女問わず、先輩後輩問わずの無自覚人たらしだから気をつけないと。



だって、逢坂くんにはーー。



「あっ!紘人(ひろと)!」


紘人ーー逢坂くんの下の名前が向こうから聞こえる。おーいと華奢な女の子が手をふって駆け寄ってくるのは可愛らしいコートにマフラー、ミニスカートに生脚という私とは正反対な格好で。


「っとと!?…きゃっ!?」



「っと……美々(みみ)なんでここに」



躓いて転びそうになった女の子を逢坂くんが私の時みたいにすんでのところで抱きとめた。


ごめんごめんと恥ずかしそうに体制をなおす彼女の頬はバラのように赤く染まっている。
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