百物語。
少年がマッチを擦り、炎を蝋燭へと移す。すると、皆、鏡写しのように同じ好奇の表情をしているのが分かった。自分もこんな顔をしているのだろうかと思った。

どこか心もとない炎が揺れていた。風も入ってきていないのに、何とも不思議で不自然な現象である。

「ねえ、やっぱりやめない?」

そっと呟くように零したのは誰だったか。それが分からぬまま、私はむっとした。何故今になってそんなことを言うのか。

けれどその反面、その言葉に同意している私が自身のなかにいたのも事実だ。

「なんでそんなこと言うんだよ。今になってさ」

不機嫌な声が聞こえた。静かだった教室にぽつりぽつりと声が漏れ始める。

「だって、やっぱり良くないよ。こんなこと。先生に見つかったら…」

「そんなこと言って、お前、怖いだけだろ?」

「違うよ…。ただ」

「帰りたいなら帰ればいいよ。僕達ははじめる。オイ」

少年が私の名を呼び、数本ある蝋燭を渡し、火を灯すよう指示する。私は黙って受け取り、黙ってマッチをこすった。

するとそれを見ていた友人達も多少渋りながら、静かに明かりを灯し出す。
 
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