きみのためならヴァンパイア
ヴァンパイアハンター
◆
少しの間、ただ寄り添って過ごした。
離れていたのはほんの少しの時間だったけど、その分を取り戻すように。
「……紫月、あのねーー」
そうしているうちに決心がついて、私は、自分の家のことを正直に話した。
紫月は、私が暁家の娘だということを、名前を知ったときから確信していたらしい。
「……それなら、どうして私のこと助けてくれたの? ほら、スパイとか、そういうのかもしれないのに」
「スパイなんかできるほど器用か? お前。そんなんじゃねぇって見ればわかるよ」
けなされてるんだか褒められてるんだかわからない。
「……お前を助けたのは、あのヴァンパイアが気に入らなかっただけ。で、もう正直に言うけど。お前を拾ったのは、ちょっといじめてやろうと思ったからだ」
「いっ……いじめ? 稀血だからとかじゃなくて?」
本気で言ってるんだとしたら、紫月にいじめられるなんて想像するのも恐ろしい。
けど、紫月がそんなことをするとは到底思えないのも事実だ。
「……俺はヴァンパイアだ。前も言ったけど、ハンターは嫌いなんだよ。それに稀血なんてどうでもいい」
紫月は、はじめから私をエサとして見てはいなかったんだ。
「……でも、私のことおいしそうとか言ってた」
「……だから、いじめてやろうと思ってたんだって。悪かったよ」