きみのためならヴァンパイア
紫月は、私が稀血とわかっていて、輸血を含む治療を受けさせてくれた。
だから本当に、私が稀血であるということは重要じゃなかったのだろう。
……そういえば、さっきまではそれどころじゃなくて忘れかけていたけれど。
私は自分が稀血だと知ったとき、頭の片隅に思い浮かんだものがある。
それは、私の家族はそのことを知っていたのだろうか、という疑問。
もし知っていたのだとすれば、あれだけ私にハンターになれとうるさかったのは、私を守るためだったのかもしれない。
ーー我ながら、ずいぶん都合のいい仮説だと思う。
でも、もしそれが本当だとしたら。
……本当だとしても、今さら家に帰るつもりなんてまったくないけど。
けど、ほんの少しだけ、ちゃんと家族に向き合って話をしてもいいんじゃないかと思えた。
「……おい、大丈夫か」
「……えっ?」
「急に黙りこむなよ。……無理もねぇけど。こんなところに長居したくないし、そろそろ帰るか」
「あ、うん、そうだね」
紫月に聞きたいことはまだあるけど、帰り道にでも話せばいいや。
ソファから立ち上がったとき、陸君のピストルが目に入った。