きみのためならヴァンパイア



ーー血が、滴る。

紫月の脚を伝い、床を染める。


数秒前、水瀬は紫月に背を向けたまま、後ろにナイフを投げた。

それが紫月の足に深く突き刺さってしまった。


「王様なのに手ごたえないなぁ」


水瀬は紫月が落とした傘を拾い上げ、それで紫月の肩を思いきり突いた。


「まぁ、手負いだから仕方ないか!」


そっちの肩は、陸君に撃たれた傷がある。

紫月が小さくうめいて、そんな紫月を水瀬は蹴り飛ばす。

水瀬は倒れた紫月の肩を踏みつけて、笑った。


「間宵君、僕は君に銀の弾丸は使わないし、殺したりもしない。ただ、一緒に来てほしいだけなんだ」

「……どういう、つもりだよ」


紫月は水瀬の足を掴んでどかそうとするが、びくともしないようだ。


「君の血液が欲しい。ヴァンパイアの王様の血。それがあれば、ヴァンパイア共を言いなりにできるだろ?」


ーーそれが、水瀬の目的。

一緒に来てほしい、なんて言っていたが、そんな生易(なまやさ)しいお願いじゃないはずだ。


「水瀬……どうせ、紫月のことを監禁でもして、好きなだけひどいことするつもりでしょ」

「さすが陽奈ちゃん、僕のことをよくわかってるね」


やっぱりそうだ。

紫月を渡すわけにはいかない。

私はポケットからピストルを取り出し、その銃口を水瀬に向けた。


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