きみのためならヴァンパイア
「なんでっ、そんな……ヴァンパイアをなんだと思ってるの……?」
「クズだと思ってるよ。前に話したよね。僕は18歳になるまで血を飲まずに耐えたんだ。それなのに、他の奴らはどいつもこいつも当然のように人間を襲うだろ?」
「……お前、元ヴァンパイアか」
「そうだよ、だからハンターになったんだ。君たちの醜さをよく知っているからね」
紫月は手のひらのナイフを抜くと、それを握る。
切っ先を水瀬に向けて突進するも、水瀬はソファを盾にして避けた。
「それにしても間宵君、手負いとはいえ思った以上に弱いなぁ。……そろそろ、もうわかるでしょ? 僕の勝ちで終わりだよ」
水瀬が取り出したのは、刃渡り15cmほどのサバイバルナイフ。
「もちろん殺したりしないから、安心してね」
水瀬は私に向かって笑う。
「安心できるわけ、ないでしょ」
もう、無理だ。水瀬を止めることはできない。
ーー撃つしか、ない。
ピストルを握る手のひらに、力を込める。
でも、撃てる?
ちゃんと、水瀬に当てられる?
水瀬に向けたままの銃口は、相変わらず震えて定まらない。
「……無理、しない方がいいと思うよ。陽奈ちゃん、なんにもできないもんね」