きみのためならヴァンパイア
「……やるね、陽奈ちゃん」
ーーピストルの先から放たれた実弾は、水瀬の太ももに命中した。
当たった。当てられた。
私が撃った。私は、人を、水瀬を、撃ってしまった。
事実を理解すると共に、罪悪感が波のように押し寄せる。
そのとき、紫月が私の名前を呼んだ。
「陽奈、助かった」
……紫月の言葉で、私は救われた。
ーー私、紫月の助けになれたのかな。
心のもやが晴れていくみたいだ。
私が立ち尽くしている間に、紫月は水瀬を突き飛ばす。
形勢逆転だ。
けれど水瀬は額から汗を伝わせながらも、諦めようとはしない。
立ち上がるのだってつらいはずなのに、その視線は紫月を捉えて離れようとしない。
二人がもつれ合い、互いの胸ぐらを掴んだ。
素手の殴り合いになるーーそう思ったとき。
ーーパリンッ!
大きな音を立てて、リビングの掃き出し窓のガラスが割れた。
粉々になったガラスが二人に降りそそごうとしたとき、紫月は咄嗟に身を引いた。
足を撃たれたばかりの水瀬は反応が遅れて、その身にガラスのシャワーを受ける。
……どうして、ガラスが割れたりしたんだろう。
少なくとも私たちは窓に何もしていない。
考えを巡らせていると、突然、私の背後で玄関のドアが勢いよく開いた。