きみのためならヴァンパイア
そこから現れたのは、私の父親だった。
思わず、目を疑う。
「ど、うして……」
父親は私のことを一瞥したが何も言わず、私の横をずかずかと通りすぎていく。
それから、リビングにいる紫月に向かって無言で銀のピストルを向けた。
「待って、お父さん!」
慌てて父親の腕を掴むが、ピストルを下ろそうとはしてくれない。
「陽丞様、待ってください」
私たちに気づいた水瀬が、焦った様子で父親の名前を呼ぶ。
水瀬はこっちへ来ようとするも、その歩みは遅い。
さすがの水瀬でも、撃たれた上にガラスの破片をまともに浴びたのはさすがに堪えたようだ。
「……水瀬君、これはどういうつもりだね」
「この、間宵紫月の血があれば、ヴァンパイア共を思い通りに動かせます。人間に変えてしまったらもったいない!」
「君は優秀だと思っていたが……元ヴァンパイアだけあって、やはりわかっていないようだ」
「な、何をですか?」
「ハンターの矜持だよ。ヴァンパイアを滅ぼすことが私たちの目的だ。わかったら端でおとなしくしていてくれたまえ」