きみのためならヴァンパイア



「でも……っ」

「外を見なさい」


割れた窓の向こうに、人影が見えた。

私の家族だった。母も、弟も、叔父や叔母もいる。

みんなが、ピストルを部屋の中に向けている。


「あのうちふたつは、実弾入りだ。君は黙っていろ」


水瀬を撃つのもいとわない、ということだろうか。

水瀬は何も言えなくなって、悔しそうに顔を歪めながら口を結ぶ。


「さて、貴様が最後の王族で間違いないな」

「……ああ、そうだよ」


紫月は、認めてしまった。

この状況では認めざるを得ないだろう。

けれど認めてしまったら、父親が紫月を撃たない理由がなくなってしまう。


私は、思わず駆け出していた。

紫月を庇うように抱きしめる。


「陽奈……お前、家族と仲悪いって言ってたよな。今ならそれ、よくわかる。お前の父親、全っ然、話通じなさそう」

「そうだよ……だから、もう、どうしよう……」


弱音を吐く私の頭を、紫月が撫でる。

それは優しく触れたわけではなくて、まるでもう、諦めてしまったような。

弱々しくて、あたたかい手のひらだった。


「陽奈、どきなさい」

「……嫌」


なけなしの勇気で、父親にピストルを向ける。

こんなことしても、仕方ないのはわかってる。

私たちは、外からも狙われている。

私が父親を撃てたとしても、私も紫月も他の家族にやられてしまう。

でも、この状況を甘んじて受け入れるなんて、そんなことできるわけないんだ。


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