きみのためならヴァンパイア



「陽奈。まだヴァンパイアを庇うのか」


父親は、初めて表情を変えた。

眉間(みけん)に深いシワを刻み、私を見る目には哀れみすら感じる。


「お前は、確かに私の娘だった。私だって鬼ではない。……だから最後に(・・・)確認するがーーお前は、暁の名を背負う私の娘のままか? それとも、家族を裏切りヴァンパイアの協力者となったのか?」


ーーそんなの、答えは当然、決まっている。

紫月を抱きしめる手に力を込めた。


「私はっーー」


ーーカラン。

私が言いきる前に、父親は銀のピストルを床へ落とす。

それを爪先で蹴り、私の手元にピストルが届けられた。


「暁の名を背負う覚悟があるのなら、お前がそいつを撃て。撃てないと言うのなら、私が親としての責任を持って、お前を処分しよう」


父親は懐から、銀色ではないピストルを取り出した。

すなわち、そのピストルは対人間用ということを表している。

……処分、だって。私を、撃つつもりなんだ。


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