きみのためならヴァンパイア
「……おい、ヴァンパイアのことだって殺しはしないのに、娘のことは殺せるとでも言うのかよ」
「記憶を失って人間になった元ヴァンパイアより、自分の意志でヴァンパイアに協力する人間の方が有害だろう」
「……そうかよ、親としてどうかしてるな」
その通りだ、どうかしている。
そのどうかしている父親は、言ったことを絶対に曲げない。
私が紫月を撃たなければ、私も紫月も撃たれておしまいだ。
けど私は何があっても、紫月のことを撃ったりしない。
ーーどうすればこの場を切り抜けられるだろう。
私の脳みそがぐるぐると必死に逃げ道を探っていると、思い詰めた表情の紫月が口を開いた。
「……陽奈が俺を撃てば、陽奈に危害は加えないんだな?」
「紫月……?」
紫月は確認するように、父親に訊ねた。
ーーどうしてそんな質問をしたの。
私が紫月を撃つはずがないのに。
「無論だ。ヴァンパイアを撃てたなら、ハンターとして認める。暁家に戻ることだって許そう」
「……嘘じゃねぇよな」
「ああ、嘘は好かん」
父親の答えを聞いて、紫月は私のそばに落ちている銀のピストルを拾い上げた。