きみのためならヴァンパイア
◆
浴室から出ると、タオルと、彼のものであろうTシャツとハーフパンツが用意されていた。
……そういえば、濡れてしまったから下着がない。
服を借りられるだけ感謝しなきゃ。
そう自分を納得させた頃、洗面室のドアが一度ノックされた。
「おい」
「はっ、はい!」
「開ける」
「ちょ、ちょっと待って! 服着るから!」
慌てて服を身にまとう。
それを見計らったように間宵紫月はドアを開けた。
「そこにあるのは好きに使え。さっき着てた服はそっちな」
それだけ言うと、また去っていく。
彼が指差した洗面台の下の収納には、ドライヤーやコームがあった。
服を入れろと指示された洗濯機のそばには、洗剤が備え付けてある。
……意外と優しいし、なんていうか、ちゃんとしてるかも?
真意こそわからないが、今は甘えさせてもらうことにした。
◆
……――前言撤回!
間宵紫月の元まで行って、すぐに思い知らされた。
まったくもって、優しくないし、ちゃんとしてない。
ついさっきまでの自分の目を覚ましてやりたい。
「ほら、心配するなら今だぞ?」
私は今、ソファに押し倒されている。