きみのためならヴァンパイア




浴室から出ると、タオルと、彼のものであろうTシャツとハーフパンツが用意されていた。


……そういえば、濡れてしまったから下着がない。

服を借りられるだけ感謝しなきゃ。

そう自分を納得させた頃、洗面室のドアが一度ノックされた。


「おい」

「はっ、はい!」

「開ける」

「ちょ、ちょっと待って! 服着るから!」


慌てて服を身にまとう。

それを見計らったように間宵紫月はドアを開けた。


「そこにあるのは好きに使え。さっき着てた服はそっちな」


それだけ言うと、また去っていく。

彼が指差した洗面台の下の収納には、ドライヤーやコームがあった。

服を入れろと指示された洗濯機のそばには、洗剤が備え付けてある。


……意外と優しいし、なんていうか、ちゃんとしてるかも?


真意こそわからないが、今は甘えさせてもらうことにした。





……――前言撤回!


間宵紫月の元まで行って、すぐに思い知らされた。


まったくもって、優しくないし、ちゃんとしてない。

ついさっきまでの自分の目を覚ましてやりたい。


「ほら、心配するなら今だぞ?」


私は今、ソファに押し倒されている。


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