きみのためならヴァンパイア



「……え、なに? 王様……? 私が?」

「そう。俺が人間になって、ヴァンパイアの王族は絶えた。けどその後にお前が、まだ(・・)王だった頃の俺の血を飲んで、ヴァンパイアになった。お前の中に流れるヴァンパイアの血は純粋な王族の血で、それが流れてるのは今やお前だけ。……わかったか、女王様」


……うん、まったくわからない。

なんなら、あんまりわかりたくもない。

わかりそうな気はするけど、認めたら真実になってしまう気がして、わかりたくない。


「悪意のあるヴァンパイアをどうにかしたいなら、俺の残したカプセルがなくても、お前の血でどうにかなるってことだ。……やってほしくはねぇけど」


……まさかそんなことになるとは思わなかった。

ヴァンパイアになっただけのつもりだったのに。

けど、せっかく手元にカードがあるなら、使わないのももったいない。

私だって、むやみやたらとヴァンパイアたちを言いなりにしたいわけじゃない。

それでも、自分の血液が抑止力になると思えば。

はからずもヴァンパイアの王となってしまったが、それも悪くはないかもしれないと思った。


ーーとはいえ、私がやろうとしていることはきっと大変だ。

大変なんて言葉じゃ言い表せないかもしれないくらい。

それに、早くしないといつハンターたちが動き出すかもわからない。


……そんなわけで私は、今もずっと焦燥感に(さいな)まれている。


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