きみのためならヴァンパイア



「別にいいなんて……」

「思い出ならこの家でまた作ればいい。俺は陽奈がいてくれればそれでいいんだよ。……お前は?」

「わ、私だってそうだよ」


不意打ちでそんなことを言われると、照れるからやめてほしい。


「……最近浮かない顔してるけどな、ヴァンパイアのことだろ? そんなに心配すんなよ。お前一人で抱えることじゃない。それに、俺がいるだろ。何があっても大丈夫だ」

「ーーうん……うん、ありがとう」


すごくすごくうれしい言葉なのに、素直に態度に出せない。

紫月が手まねく幸せなところへ向かったら、私が背負ったものが、私を引きずり下ろそうとしてくる気がしてしまう。


「……これでも俺の言葉が信用できないっていうならーー」


ーー違う、そういうわけじゃない。

慌てて弁明しようとしたとき、紫月が小さな小箱を差し出してきた。


「……え、これ、ってーー」

「この前の返事」


……この前の返事ーーって、私の、告白の?

それはいくらなんでも急すぎる。

心の準備ができていない。

私が紫月を止める間もなく、目の前で紫月が(ひざまず)く。

そして、小箱の蓋を開いた。


「ーー陽奈、愛してる。俺と結婚してくれ」


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