きみのためならヴァンパイア



小箱の真ん中に鎮座するのは、ダイヤがきらめく華奢な指輪。

紫月の言葉、それから目の前にある指輪の意味を、瞬時に理解することができない。


あいしてる?

けっこん?

……さすがに、夢かも?


ほっぺをつねるも、しっかり痛い。

自然にあふれ出る涙は、痛みによるものか、うれしさによるものか、自分でも何がなんだかわからない。


「え、えっ……、」


脳内で整理できていないまま、ちゃんとした言葉を喋れるはずもなく、小さく鳴くような声しか出せなかった。

そんな私を紫月はじっと見つめて、笑う。

自然で優しい笑顔だが、まっすぐな眼差しは私を捉えて離さない。


「……守られてるだけは嫌なんだろ? だったら俺は、陽奈がなにかを背負うなら一緒に背負う。どこかに向かうなら隣を歩く。そこが天国でも地獄でも、絶対に陽奈を離したりしない。だから、その約束を形にしたい。……受け取って、くれるか?」


……そんな真剣に言われたら、私も怖がってなんていられない。

夢かもしれないなんて、怯えていられない。


私はずっと、紫月の隣を歩きたかったんだ。


「……うん……紫月、私もーー」


紫月が言ってくれたことは、この世のどんな言葉よりもうれしくて。

胸がいっぱいで、思いがあふれて止まらなくなりそう。

だから、返事は一言だけ。

一番伝えたい、一番大切なこと。


「私も、紫月を愛してる」


紫月は微笑んで私の左手を取り、指輪をそっと薬指にはめてくれた。


「……約束。もう離れない。ずっと隣にいる。だから、何があっても大丈夫だ」

「うん……!」


紫月と交わした約束を、何よりもずっと大切にしよう。

私はもう、ひとりじゃない。


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