きみのためならヴァンパイア
私の体がこわばったのがわかったのか、彼は私の肩に優しく手を触れた。
「もちろん俺は、そんな下品な真似しない」
優しい言葉に聞こえるが、私はもうなんとなく、彼が次に言うことがわかってる。
「……だから、あなたに血を吸われても大丈夫って?」
「そういうこと」
間宵紫月は、再び私を押し倒す。
大丈夫なんて言われたって、100%信じるなんてとてもできない。
でも現に私がこうして、一応は無事といっていい状態なのは、彼のおかげだ。
……だったら少しくらい、信じてみたっていいのかも。
それに、抵抗したって無意味だってわかる。
今の私は、力でも口でも、彼には絶対敵わない。
間宵紫月の唇が、首筋に触れる。
くすぐったくて、恥ずかしくて、つい目を瞑る。
そして、そのまま噛みつかれた。
牙が当たる感覚はある。
けれどそれは思っていたよりもずっと優しくて、心地よさすら感じた。
牙が肌に刺さって血を吸われるなんて、想像では痛くて怖いものだったのに。
身を委ねて少しの時間が経ち、間宵紫月は名残惜しそうに私から離れた。
「お、終わった……?」
「まだやってほしいか?」
私は首を横に振る。
正直なところ、まだ全然やってもらってもいいなんて思ってしまった。
けれど彼の試すような視線が、肯定したら何をされるかわからないと私に思わせた。
「で? どうすんの、お前は」
立ち上がった間宵紫月の唐突な問いに、頭が追いつかない。
噛みつかれていた首筋に残る温もりが、よけいに脳を鈍らせる。