きみのためならヴァンパイア
王様
ヴァンパイア。
人の血を吸う、人ならざる、悪しき存在。
ヴァンパイアハンター。
ヴァンパイアを狩る、人のために生きる、正しき存在。
そのヴァンパイアハンターの一族の、光栄なる跡取り候補が私、暁 陽奈。
……そう、教え込まれて生きてきた。
ーーが、正直なところ、光栄とか全っ然思ってない。
ハンターになるとか絶対にお断りだ。
私は普通に生きて、普通に死にたい。
ヴァンパイアなんて怖い存在に関わりたくもないのに、狩るとか本当、無理すぎる。
そんなわけで、家族みんなに反抗しまくった結果。
いびられいじめられ虐げられて、私は暁家の恥扱い。
けど別にいーんだ、そんなの。むしろ好都合かも。
……なんて開き直って、もう好き勝手しようと思っていた夏休み。
「陽奈、いい加減にしなさい」
「ハンターの自覚を持て」
「私たち一族の使命なんだから」
「ヴァンパイアを狩るんだ」
いつも私のことは厄介者扱いで無視するくせに、私が夏休みに入った途端、ここぞとばかりに家族みんな大騒ぎだ。
ヴァンパイアハンターの極意を教え込むなら、時間がたっぷりある夏休みがちょうどいいとでも思ってるらしい。
普段の私なら、みんなに言い返したりはしない。適当に流して終わりにするのが一番穏便に済ませられるから。
ーーけれど、今日は違った。