きみのためならヴァンパイア
一瞬、言ってる意味がわからなかった。
けれど彼の視線が私の首筋に向いているのに気づいて、言葉の意味を理解する。
「……私、ごはんじゃないからね?」
「それじゃデザートにしてやるよ」
すぐに否定の言葉が出てこない自分は、どうかしてしまったのかもしれない。
スープをお皿に注ぎながら、さっき血を吸われたときのことを思い出す。
……嫌じゃなかった。
吸血依存症になってしまう人の気持ちがわかってしまいそうだ。
けど、私は絶対そうなったりしない。
決意を胸に抱きながら、料理をテーブルに並べた。
◆
「それじゃ、いただきます」
「……いただきます」
あ、ちゃんと手を合わせるんだ。
ヴァンパイアの王様も、意外とかわいところがある。
なんて思いながら、つい見つめていると。
「なんだよ」
睨まれちゃった。
「な、なんでもない」
「そーかよ」
慌てて手を動かしながら、料理を口に運ぶ。
我ながら、有り合わせにしてはいい出来だと思う。
間宵紫月も、特に文句も言わずに食べてくれている。
なんだかはじめて彼の役に立てた気がして、ちょっとうれしい。
「……あ、あのさ!」
「ん?」
「私、ここにいてもいいの?」
「拾ってやるって言っただろ」
「そうだけど……迷惑じゃない?」
私にできることなんて、本当に料理くらいしかない。
それか、血を吸われるくらいだ。
私がここにいることで、間宵紫月にとってどれほどのメリットがあるのだろう。
「くだらねー心配すんな。俺の意志で拾ったんだよ」
「そ、そっか……ありがと」
本当にここでしばらく過ごしていいのなら、聞いておきたいことがある。
「……好きな食べ物とか、ある? あ、血はナシね!」
「肉」
なるほどね。
血に近いほどいいってこと?
「それじゃ、嫌いなものは?」
「……ヴァンパイアハンター」