彼女はまだ本当のことを知らない
「もっとよく見せて」

 そう言って彼は獲物を狙うような目でタニヤを見つめる。その口元は不敵に笑っている。
 キリリとして少しつり上がった琥珀色の目。目鼻立ちのはっきりした相変わらず顔だけはいい目の前の男は、肘掛け椅子にゆったりと腰掛け、長い足を組んで此方をじっと見ている。
 その狼独特の三角の耳はピンと立ち、後ろからはみ出している白銀の尻尾は、期待に満ちてゆらゆらと揺れている。

「だめだよタニヤ、見せるためのものなんだから隠しちゃ」
「で、でも・・ランスロット様」

 どうしてこんなことになったのか。
 ミルクティー色のレースとリボンが付いた、ピンク生地の裾がドレープ式になった前開きのベビードール。太もも丈だが、スリットが入っているため、足を動かすと足の付け根まで丸見えだ。対となったショーツも生地が薄くて、切れ込みがかなり深くて、辛うじて大事な部分が隠れている程度。
 それを身につけタニヤは羞恥にまみれ男の前に立つ。
 顔を上げることが出来ず、ずっと俯いたままのタニヤの耳にはパタパタと彼の尻尾が椅子の肘掛けを打つ音がやけに大きく聞こえる。

「ちゃんと見せてくれないと感想が言えないじゃないか」

 その声音は確実に面白がっているのがわかる。

「全身真っ赤だね。恥ずかしいのか」
「わ、わかっているくせに」
「でも、元々こういうこと、していたんだろ?」
「で、でもそれは見せるために着ていたのではなくて、き、着心地を・・」
「それって見せるための下着だから、着心地だけじゃ無く、見る者の意見も大事だろ」

 男が徐に足を広げるのが目の端で見えた。その股間は少し離れて立っているタニヤからもはっきり見えるくらい盛り上がっている。
 まさか、あのランスロット=テイラーが私を見て興奮している?
 大きなメガネと地味な茶色の髪、ヘーゼルナッツ色の目は大きくて、自分の容姿を幼く見せるだけで、妖艶とはほど遠い。胸だけは人より大きくて彼女のコンプレックスだったが、それが今、目の前の男に視姦され、乳首が生地で擦れて勃ち上がっている。視力のいい獣人の彼からはそれすらも見えているのだろうか。

 
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