彼女はまだ本当のことを知らない
「下着?」
明らかに女性用の下着。不思議に思って添えられたカードを読むと、予想と違ったものだった。
発送者は彼女で間違いない。しかしその宛名は。
何かあると、思ったが、すぐに間違って届けられたそれを取りに来た彼女から事情を聞いた。
最近、彼女の金回りが少し良くなったのは感じていた。
実家への送金額が減って自由に使えるお金が増えたのかと思ったが、そうではなかった。
これはチャンスかも知れない。
無理矢理彼女から奪った手紙に書き添えた言葉は、彼女に語った内容とは違う。
「今後、彼女はこの仕事を受けられない。これからは顧客として協力するので、よろしく」と書いた。
仕事の帰りに店に寄ると、主は最初驚いていたが、快く納得してくれた。
そこで最新のいちオシ商品を買い求め、その足で不動産屋に寄った。
タニヤに出会ってから、いずれ彼女と住むつもりで家を探していた。ちょうどいい物件があるからと数日前に連絡があったので、遅くなっても待っているようにと連絡してあった。
こんな時、貴族の肩書と騎士団隊長の地位は役に立つ。少々の無理なら快く引き受けてくれる。
不動産屋はすぐに契約するという発言に驚いていたが、急いで寝室に家具を揃えろという言葉と共に金額を上乗せすれば、事情を察して頷いた。
「いやあ、隊長にも終に番が出来たのですね。涙に明け暮れる女性の流す涙で水害が起こらなければいいですが」
「つべこべ言わず、さっさとしろ。彼女以外の女のことなど知らん」
手続きを済ませ、自宅へ戻って両親に番を見つけたから家を出ると言えば、二人は手放しで喜んだ。
「数年前からそうじゃないかと思っていたんだ。どうなっているのかと思っていたが、獣人でない相手なら仕方ない」
「よく我慢したわね」
父は狼、母はウサギの獣人カップルは出会ったその日に一線を越え、数日後に結婚した。
そんな彼らからすれば、息子のやっていることはもどかしかっただろう。
これまでよく耐えたと、自分でも思う。
◇◇◇◇◇◇◇
疲れ切って眠る、薄いベビィドールをまだ半分羽織ったままのタニヤの髪をクルクルと弄びながら、その寝顔を眺める。
今頃両親は、彼女の両親に婚姻の申し出に代理人を立て行かせている筈だ。本当は先に自分も挨拶に行くべきだが、きちんと正式に話を進めるなら、先に代理人を立てて打診するのが普通だった。
彼女には身分差や貧乏だからと、負い目を感じてほしくない。
侯爵家から財産管理人や領地管理人を派遣して、彼女の家が自立して今後も存続するように手助けするつもりだ。
邸や領地を整備するために、いくらか支援はするが、何もかも此方でしてしまうと、きっと彼女は萎縮してしまう。
支援は結婚の支度金だと思ってもらえればいい。
「タニヤ、もう離さないから」
しどけなく眠る彼女の寝顔に、また欲情する。
目が覚めたらどこから話そうか。
二年前からずっと好きだった。君は俺の番だ。
そう言えば、彼女はどんな顔をするだろう。
俺の重過ぎる愛を、彼女はまだ知らない。
明らかに女性用の下着。不思議に思って添えられたカードを読むと、予想と違ったものだった。
発送者は彼女で間違いない。しかしその宛名は。
何かあると、思ったが、すぐに間違って届けられたそれを取りに来た彼女から事情を聞いた。
最近、彼女の金回りが少し良くなったのは感じていた。
実家への送金額が減って自由に使えるお金が増えたのかと思ったが、そうではなかった。
これはチャンスかも知れない。
無理矢理彼女から奪った手紙に書き添えた言葉は、彼女に語った内容とは違う。
「今後、彼女はこの仕事を受けられない。これからは顧客として協力するので、よろしく」と書いた。
仕事の帰りに店に寄ると、主は最初驚いていたが、快く納得してくれた。
そこで最新のいちオシ商品を買い求め、その足で不動産屋に寄った。
タニヤに出会ってから、いずれ彼女と住むつもりで家を探していた。ちょうどいい物件があるからと数日前に連絡があったので、遅くなっても待っているようにと連絡してあった。
こんな時、貴族の肩書と騎士団隊長の地位は役に立つ。少々の無理なら快く引き受けてくれる。
不動産屋はすぐに契約するという発言に驚いていたが、急いで寝室に家具を揃えろという言葉と共に金額を上乗せすれば、事情を察して頷いた。
「いやあ、隊長にも終に番が出来たのですね。涙に明け暮れる女性の流す涙で水害が起こらなければいいですが」
「つべこべ言わず、さっさとしろ。彼女以外の女のことなど知らん」
手続きを済ませ、自宅へ戻って両親に番を見つけたから家を出ると言えば、二人は手放しで喜んだ。
「数年前からそうじゃないかと思っていたんだ。どうなっているのかと思っていたが、獣人でない相手なら仕方ない」
「よく我慢したわね」
父は狼、母はウサギの獣人カップルは出会ったその日に一線を越え、数日後に結婚した。
そんな彼らからすれば、息子のやっていることはもどかしかっただろう。
これまでよく耐えたと、自分でも思う。
◇◇◇◇◇◇◇
疲れ切って眠る、薄いベビィドールをまだ半分羽織ったままのタニヤの髪をクルクルと弄びながら、その寝顔を眺める。
今頃両親は、彼女の両親に婚姻の申し出に代理人を立て行かせている筈だ。本当は先に自分も挨拶に行くべきだが、きちんと正式に話を進めるなら、先に代理人を立てて打診するのが普通だった。
彼女には身分差や貧乏だからと、負い目を感じてほしくない。
侯爵家から財産管理人や領地管理人を派遣して、彼女の家が自立して今後も存続するように手助けするつもりだ。
邸や領地を整備するために、いくらか支援はするが、何もかも此方でしてしまうと、きっと彼女は萎縮してしまう。
支援は結婚の支度金だと思ってもらえればいい。
「タニヤ、もう離さないから」
しどけなく眠る彼女の寝顔に、また欲情する。
目が覚めたらどこから話そうか。
二年前からずっと好きだった。君は俺の番だ。
そう言えば、彼女はどんな顔をするだろう。
俺の重過ぎる愛を、彼女はまだ知らない。