彼女はまだ本当のことを知らない
「ん…んんん」

 唇から捩じ込むようにして、舌が口腔内に入り込む。
 ランスロットの鍛えた体が重くのし掛かり、ベッドとの間に押し潰されそうなになる。
 ゴリッと固く熱いものがお腹に当たる。
 それはさっきシーツの中で見た、彼の男根だとわかる。
 
「…あ、んん、あ」

 塞がれた口からだらりと唾液がこぼれ落ち、空気を求めて肺が大きく膨らむ。
 足の間に滑り込んだ彼の長い指が、秘唇を割ってずぶりと差し込まれる。

「ん…あ、ああ…」

 舌を絡め取られ、ビチャビチャとした唾液の混じり合う音が耳に響く。
 下に差し込まれた指が増やされ、中を縦横無尽に掻き回される。
 彼の指先がある部分に当たると、ビクリと腰が浮いた。

「君は俺の『番』だ」

 唇を僅かにずらし、ランスロットが囁いた。

「え…?」

 彼の口づけにぼんやりとした耳に、とんでもない言葉が聞こえてきた。

「つ…番? 私が…あなたの?」

 そう問いかけると、彼は鼻先を擦り寄せてきて、こくりと頷いた。

「うそ…そんな…」
「嘘ではない。人間の君も、獣人と一緒に働いているのだから、『番』については少しは知識があるだろう?」
「それは…そうですが…」

 自分が誰かの「番」に…しかも、天下のランスロット=テイラーの「番」になるなど、夢にも思わなかった。

「そんな…だって…私とあなたは…出会ってもう二年…」

「番」は会えば獣人はすぐにわかるという。しかし、彼はそんな素振りをまったく見せなかった。それとも、その話は本当は嘘だったのだろうか。
 
「『番』は会えばすぐにわかるというのは…」
「それは本当だ」

 私の質問に答えながら、彼は舌を首筋に這わせる。ゾクゾクとした快感が体を駆け抜ける。

「ほ、本当…? でも…」
「俺の忍耐力と精神力を褒めてほしいな。君を前にして、何度襲いかかろうと思ったか」
「おそ…」
「でも君は人間だ。獣人と違って、人間は『番』という観念がない。急いて君を怖がらせたくなかった」
「私の…ため?」

 話を続けながらも、彼はチュッチュッチュッと、体のあちこちに唇を這わせていく。
 同時にまだ差し込まれたままの指が、中を行ったり来たりする。
 お陰で話に身が入らない。

「仕方がないから、君の香りがするものを集めて慰めていた」
「へ…? 私の…香りがするもの? あ、ん…」

 彼の言う意味はどういうことなのか。

「君がくれたカード、君が使ったハンカチやペン。君が書いてくれた伝言メモ。ハンカチはそろそろ1ダースになるかな」
「え…うそ…あれ、あなたが?」

 時折無くなった私物。自分が物を良く無くす人間だと思っていたが、まさか彼が奪っていたというのか。

「あの下着、君の香りがプンプンした。遂にその他一同からではなく、君から個人的にくれたプレゼントだと胸を踊らせたのに…」
「それは…すみません」

 思わず謝ったが、なぜ自分が申し訳なく思わなければならないのか、思い直した。

「獣人は『番』のために巣作りをする。ここも君のために買ったんだ」
「え、あ、あああ」

 次から次に告げられる彼の告白に驚くとともに、耳を噛まれて同時に愛芽を押し潰され、タニヤは体を弓なりに反らした。
 
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