若頭
 この会場の誰一人として……。


 


 目元の瞳を少し隠すように流れる白銀の艶やかな髪の毛。




 金色に輝く切れ長の瞳に、遠目でも目立つような鍛えられた日本人離れした図体の大きい身体。




 普段から高身長で鍛えられた身体の人達に囲まれている私でも、圧倒される背の高さと身体の作りから違うと感じる程だ。



 それにしても、このような盛大なパーティーへ来るのは初めてで、まだ本当に始まったばかり。



 だから、今日の挨拶もまだしておらず、一度も接触する事は無く、男と会うのは本当に今が初めてだ。



 さっき挨拶は終えたと言った。


 だが、それは欠席するはずであった彼以外全員を指していただけだった。



 こんなに至近距離で初めて会ったが、パーティー会場の廊下でまだ明るい場所だと言うのに、薄暗い影を纏うようなオーラを嫌でも放つ人物。





 この男には関わり合いを持ちたくない……前々からずっと、そう思って注意していたのに。




 けれど、次の言葉で私の心臓は一瞬にして男の拳に心臓をグッと握られたように動けなくなってしまう。




「いや、そういう付き合うじゃない……恋愛的な方で」





 数秒後、やっと言葉の意味を理解して、掴まれた腕を自分の方に逃げるようにばっと抜き取った。




「……ごめん、痛かったよね。加減できて無かった」





 別に掴まれている腕が痛くて逃げるように抜き取った訳じゃない……貴方から逃げたいからなのに謝られると不甲斐ない気持ちに陥る。





「あぁ、お探ししましたよ時雨様。まさか娘と居るとは知らずに声をかけてしまって申し訳ない。うちの娘は礼儀知らずで何か迷惑をお掛けしたでしょうか? 後から罰しておきますので」

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