Snow blossom
第29話
「桜、忘れ物ない?」
「うん、大丈夫。」
「んじゃ、行こうか。」
雪と桜は、会計伝票を見ながら、
カラオケの退室時間ギリギリに
ジャケットを羽織って、
部屋を出た。
隣同士、雪が伝票を片手に外を
出ると見たことのある人が受付にいた。
「あ、あれ。漆島じゃねぇ?
嘘、瑞希ちゃんと付き合ってたって
本当だったじゃん。」
桜だと思われている瑞希は菊地雄哉の
隣にいた。
雄哉は、桜と雪を指差して驚いている。
そう、雄哉は、
桜を瑞希と勘違いしている。
「え…。」
本物の桜は唖然とする。
「ほら、やっぱそうじゃん。
桜ちゃん、瑞希ちゃんと雪が
一緒にいるよ。
付き合ってるんだよね。
もう、双子だからどっちがどっちか
わからなくなるけど…ん?ん?」
何となく、雰囲気が変なことに
雄哉は気づく。
本物の瑞希はずっと黙っている。
「ごめん、会計あるから。」
雪はなんとなく状況を察して、
言い訳することなく、会計伝票を受付に
渡した。
「って、おい。
クラスメイトが来たっていうのに
その返し?
俺らのことはなんも言わないの?」
「別に。興味ないから。」
雪は冷淡に対応する。
「雪、会計は私も出すよ。」
桜が雪の隣に近づいて、
財布を出した。
「《《桜》》、いいよ。
ここは俺出すから。
気にしないで。」
「え、あー、ごめん。
ありがとう。」
瑞希と雄哉は間近で、2人の様子を
伺っていた。
「え、今、桜って言ったよね。
ん?…ってことは、
こっちって瑞希ちゃん?
どういうことよ。」
雄哉は混乱している。
「……。」
瑞希だということがバレて
作戦は失敗だと思った瑞希は
カラオケのお店の外に駆け出して行った。
雪と桜は立ち去っていく瑞希を
何かやらかしていたのだろうかと
少し心配になった。
「え、み、瑞希ちゃん!!
なんでいなくなるの?」
雄哉は、
受付していたものをキャンセルして、
慌てて追いかけた。
「ねぇ、菊地くん。
瑞希と一緒にいたけど、
大丈夫だったかな。」
「…いいじゃないの?
あいつ、女子には優しいからね。」
「え、そうなんだ。
知らなかった。」
何かご不満そうな雪は、
自動ドアの出口に向かった。
桜は雪の後ろをついていった。
****
「瑞希ちゃん!!」
歩道橋の上に佇む瑞希を走って
追いかけた。
手すりに手をついて
真下に走るたくさん車を眺めていた。
「嘘ついて、いやになった?」
雄哉は両膝に手をつけて、
荒い息を整えた。
「え、いや。
俺も分からなかったから。
双子って顔似てるでしょう。
嘘ついてても見破らないと
いけないよね。
難易度は高いけど。」
「怒ってないの?」
「何を怒るの?」
「……なんでもない。
ごめんなさい。
帰るね。」
作戦を考えていたことが失敗して
ご機嫌を損ねた瑞希は、
その場から立ち去ろうとした。
「え、え、待ってよ。
なんで帰るのさ。
一緒にカラオケ行くって
言ったでしょう。 」
「ごめん、私、君に興味ないの。」
冷たい表情。
どこか寂しそうな顔で雄哉につぶやく。
「…え、そうなの。
んじゃ、なんで、カラオケって。
ちょっと待って。
もしかして、あの2人の様子見るため?」
瑞希は後ろを向いて、
階段をおりようとした。
「瑞希ちゃんは、
漆島のことが好きなんだ?」
その言葉に少しの間だけ止まったが、
瑞希は、下唇を噛んで、
すぐに駆け降りていった。
雄哉は、雪をまた妬ましく思えた。
自分のものになりそうなものが
また雪に取られるんじゃないかという
妬みに変わる。
雄哉は、桜のことが好きだった。
歩道橋の下でクラクションが響いていた。
「うん、大丈夫。」
「んじゃ、行こうか。」
雪と桜は、会計伝票を見ながら、
カラオケの退室時間ギリギリに
ジャケットを羽織って、
部屋を出た。
隣同士、雪が伝票を片手に外を
出ると見たことのある人が受付にいた。
「あ、あれ。漆島じゃねぇ?
嘘、瑞希ちゃんと付き合ってたって
本当だったじゃん。」
桜だと思われている瑞希は菊地雄哉の
隣にいた。
雄哉は、桜と雪を指差して驚いている。
そう、雄哉は、
桜を瑞希と勘違いしている。
「え…。」
本物の桜は唖然とする。
「ほら、やっぱそうじゃん。
桜ちゃん、瑞希ちゃんと雪が
一緒にいるよ。
付き合ってるんだよね。
もう、双子だからどっちがどっちか
わからなくなるけど…ん?ん?」
何となく、雰囲気が変なことに
雄哉は気づく。
本物の瑞希はずっと黙っている。
「ごめん、会計あるから。」
雪はなんとなく状況を察して、
言い訳することなく、会計伝票を受付に
渡した。
「って、おい。
クラスメイトが来たっていうのに
その返し?
俺らのことはなんも言わないの?」
「別に。興味ないから。」
雪は冷淡に対応する。
「雪、会計は私も出すよ。」
桜が雪の隣に近づいて、
財布を出した。
「《《桜》》、いいよ。
ここは俺出すから。
気にしないで。」
「え、あー、ごめん。
ありがとう。」
瑞希と雄哉は間近で、2人の様子を
伺っていた。
「え、今、桜って言ったよね。
ん?…ってことは、
こっちって瑞希ちゃん?
どういうことよ。」
雄哉は混乱している。
「……。」
瑞希だということがバレて
作戦は失敗だと思った瑞希は
カラオケのお店の外に駆け出して行った。
雪と桜は立ち去っていく瑞希を
何かやらかしていたのだろうかと
少し心配になった。
「え、み、瑞希ちゃん!!
なんでいなくなるの?」
雄哉は、
受付していたものをキャンセルして、
慌てて追いかけた。
「ねぇ、菊地くん。
瑞希と一緒にいたけど、
大丈夫だったかな。」
「…いいじゃないの?
あいつ、女子には優しいからね。」
「え、そうなんだ。
知らなかった。」
何かご不満そうな雪は、
自動ドアの出口に向かった。
桜は雪の後ろをついていった。
****
「瑞希ちゃん!!」
歩道橋の上に佇む瑞希を走って
追いかけた。
手すりに手をついて
真下に走るたくさん車を眺めていた。
「嘘ついて、いやになった?」
雄哉は両膝に手をつけて、
荒い息を整えた。
「え、いや。
俺も分からなかったから。
双子って顔似てるでしょう。
嘘ついてても見破らないと
いけないよね。
難易度は高いけど。」
「怒ってないの?」
「何を怒るの?」
「……なんでもない。
ごめんなさい。
帰るね。」
作戦を考えていたことが失敗して
ご機嫌を損ねた瑞希は、
その場から立ち去ろうとした。
「え、え、待ってよ。
なんで帰るのさ。
一緒にカラオケ行くって
言ったでしょう。 」
「ごめん、私、君に興味ないの。」
冷たい表情。
どこか寂しそうな顔で雄哉につぶやく。
「…え、そうなの。
んじゃ、なんで、カラオケって。
ちょっと待って。
もしかして、あの2人の様子見るため?」
瑞希は後ろを向いて、
階段をおりようとした。
「瑞希ちゃんは、
漆島のことが好きなんだ?」
その言葉に少しの間だけ止まったが、
瑞希は、下唇を噛んで、
すぐに駆け降りていった。
雄哉は、雪をまた妬ましく思えた。
自分のものになりそうなものが
また雪に取られるんじゃないかという
妬みに変わる。
雄哉は、桜のことが好きだった。
歩道橋の下でクラクションが響いていた。