Snow blossom
第42話
「あのさ、
今日、亮輔くん休み
なんだけど、どうする?」
桜は、気を使って、階段の踊り場の
人がいないところに雪を誘った。
朝の登校時間、屋上に通じる階段は
人が少ない。
雄哉に見られていないかと
周りをチェックしながら、話を続ける。
「なんで、休みかわかる?」
「風邪、ひいたんだって。高熱。
ほら、体温計の写真送ってきた。
えっと、38.7くらいかな。」
桜は、雪にスマホの写真を送る。
桜のラインには送っていたが、
雪には送っていない。
わざとなのかと疑ってしまう。
「そうなんだ。
なんで、亮輔のやつ、
俺によこさないんだ。」
「え、雪には送ってないの?
てっきり雪にも伝えていると
思っていたよ。
それにしても、今日、どうしよう。
一緒にいたら、菊地くんに
目をつけられるね。
別行動でも大丈夫?」
何となく、今日は、
桜を独占できるんじゃないかと、
欲が出た。
おさえていた想いが溢れた。
「ねぇ、ちょっと来て。」
朝の慌ただしい時間。
昇降口近くでは生徒たちであふれている。
2人は、階段の踊り場から
屋上へ移動した。
「ちょっと、ここにいたら、
目立つんじゃない?」
「しゃがめば大丈夫っしょ。」
屋上の扉を開けると、
頬に風が強く打つ。
近くに見えるカザミドリが
カタカタ鳴っていた。
フェンスの近くにしゃがんだ。
「えー、しゃがむの。
確かに誰にも見られないけどさ。」
不意に、桜の左腕を引っ張って
体を寄せた。
唇に何か温かいものが当たる。
柔らかくて、優しかった。
「え……。」
一瞬のことで信じられなかった。
雪は、前髪で目を隠した。
悪いことしたかなと反省する。
「ごめん。突然に。
2人きりになれること少ないから。
菊地のことなければ堂々としていたいのに
俺の不甲斐なさに。
あ、でも、ごめん。
きちんと確かめていなかったんだけど、
桜は、どう思う?
俺のこと。」
風が足元をふわっと流れていく。
桜は、その場でぺたんと座った。
唇を両手で押さえた。
なぜか頬から涙が流れた。
「え、うそ。
泣かせるつもりじゃなかったんだけど。」
雪は、着ていたセーターで
左右にそっと桜の涙を拭く。
桜は、首をブンブン横に振る。
「違うの。
いや、本当、雪は、
瑞希を好きになったと思ってたし、
私は亮輔くんと交際してるていう体を
作らないといけなかったから
本音を隠してたの。
…嬉しかった。
ううん、うん。いや、違う。
あーもう、何言ってるか
わからないよね。
私、雪のことは1回も
嫌いになったことないんだ。
最初に会ったときからずっと好きだよ。
変わらないから。」
前髪をかきあげながら、
ぐちゃぐちゃな顔を見せた桜に
きゅんとなる雪は、そっと抱きしめた。
「…もう一回していい?」
「や、やだ。」
「うそだ。」
「学校だから。」
「そう言いながら、目瞑ってますけど?」
口角を上げて、喜ぶ桜に
雪は両肩に手を触れて、
そっとまたキスをした。
始業チャイムが大きな音で鳴り響く。
遅刻確定だ。
「どうする?サボる?」
「ずっとここで?」
「まさか。」
「だって、バレるよ。」
「もうさ、気にするのやめない?」
「菊地のこと…心配だけど。」
「何とかなるよ。
きっと大丈夫。」
「そうかな。」
「うん。いこう。
確実に遅刻だけどね。」
「それは承知の上でここに誘ったんだよ。」
「サボる気満々だったね。」
「バレた?」
「もうすぐテストあるんだから、
しっかり授業受けよう。」
「桜は真面目だな。」
「いいじゃん。真面目で。
ほらいこう。」
桜は、手を伸ばして、
雪の手を引っ張る。
立ち上がって、屋上の扉を開けて、
階段をおりていく。
ご機嫌なカザミドリが
風もないのにクルクルと回っていた。
今日、亮輔くん休み
なんだけど、どうする?」
桜は、気を使って、階段の踊り場の
人がいないところに雪を誘った。
朝の登校時間、屋上に通じる階段は
人が少ない。
雄哉に見られていないかと
周りをチェックしながら、話を続ける。
「なんで、休みかわかる?」
「風邪、ひいたんだって。高熱。
ほら、体温計の写真送ってきた。
えっと、38.7くらいかな。」
桜は、雪にスマホの写真を送る。
桜のラインには送っていたが、
雪には送っていない。
わざとなのかと疑ってしまう。
「そうなんだ。
なんで、亮輔のやつ、
俺によこさないんだ。」
「え、雪には送ってないの?
てっきり雪にも伝えていると
思っていたよ。
それにしても、今日、どうしよう。
一緒にいたら、菊地くんに
目をつけられるね。
別行動でも大丈夫?」
何となく、今日は、
桜を独占できるんじゃないかと、
欲が出た。
おさえていた想いが溢れた。
「ねぇ、ちょっと来て。」
朝の慌ただしい時間。
昇降口近くでは生徒たちであふれている。
2人は、階段の踊り場から
屋上へ移動した。
「ちょっと、ここにいたら、
目立つんじゃない?」
「しゃがめば大丈夫っしょ。」
屋上の扉を開けると、
頬に風が強く打つ。
近くに見えるカザミドリが
カタカタ鳴っていた。
フェンスの近くにしゃがんだ。
「えー、しゃがむの。
確かに誰にも見られないけどさ。」
不意に、桜の左腕を引っ張って
体を寄せた。
唇に何か温かいものが当たる。
柔らかくて、優しかった。
「え……。」
一瞬のことで信じられなかった。
雪は、前髪で目を隠した。
悪いことしたかなと反省する。
「ごめん。突然に。
2人きりになれること少ないから。
菊地のことなければ堂々としていたいのに
俺の不甲斐なさに。
あ、でも、ごめん。
きちんと確かめていなかったんだけど、
桜は、どう思う?
俺のこと。」
風が足元をふわっと流れていく。
桜は、その場でぺたんと座った。
唇を両手で押さえた。
なぜか頬から涙が流れた。
「え、うそ。
泣かせるつもりじゃなかったんだけど。」
雪は、着ていたセーターで
左右にそっと桜の涙を拭く。
桜は、首をブンブン横に振る。
「違うの。
いや、本当、雪は、
瑞希を好きになったと思ってたし、
私は亮輔くんと交際してるていう体を
作らないといけなかったから
本音を隠してたの。
…嬉しかった。
ううん、うん。いや、違う。
あーもう、何言ってるか
わからないよね。
私、雪のことは1回も
嫌いになったことないんだ。
最初に会ったときからずっと好きだよ。
変わらないから。」
前髪をかきあげながら、
ぐちゃぐちゃな顔を見せた桜に
きゅんとなる雪は、そっと抱きしめた。
「…もう一回していい?」
「や、やだ。」
「うそだ。」
「学校だから。」
「そう言いながら、目瞑ってますけど?」
口角を上げて、喜ぶ桜に
雪は両肩に手を触れて、
そっとまたキスをした。
始業チャイムが大きな音で鳴り響く。
遅刻確定だ。
「どうする?サボる?」
「ずっとここで?」
「まさか。」
「だって、バレるよ。」
「もうさ、気にするのやめない?」
「菊地のこと…心配だけど。」
「何とかなるよ。
きっと大丈夫。」
「そうかな。」
「うん。いこう。
確実に遅刻だけどね。」
「それは承知の上でここに誘ったんだよ。」
「サボる気満々だったね。」
「バレた?」
「もうすぐテストあるんだから、
しっかり授業受けよう。」
「桜は真面目だな。」
「いいじゃん。真面目で。
ほらいこう。」
桜は、手を伸ばして、
雪の手を引っ張る。
立ち上がって、屋上の扉を開けて、
階段をおりていく。
ご機嫌なカザミドリが
風もないのにクルクルと回っていた。