Snow blossom
第71話
雪は、いつもより早く起きた。
というより、ほぼ眠れなかった。
インナーカラーに変えた髪を地毛に近い
黒髪に戻した。今日は風紀委員の日で髪色はもちろん、ピアスのチェックもある。
左右どちらも3つもあけていた。
ずっとつけていたピアスを丁寧に外して、
辞書や参考書が入ってるカラーボックスの上に置いた。
その横には、亜香里に渡されていた
ピンクの蝶々の施されたパッケージのゴムが
あった。
昨年の自分には考えられない行動の数々に
自分自身で驚いている。
こんなキャラクターだったかなと思い返してみても、違うんじゃないかと疑う。
そして、今は黒髪で過去に逆戻りして
まるでタイムスリップしたようだ。
今の格好なら、この姿なら、
桜に会った時、何か反応してくれるんじゃないかと淡い期待を思い浮かべる。
前と違う学生カーストが上層部だからって内面はそんなに変わってないと思っている。亜香里と交際しているというが、本当に好きかどうかなんてわからない。恋愛の進展なんて深いところまでわかっていても、亜香里に対して雪自身は本当の自分を知らないくせと皮肉れていた。
登校したことない時間に教室に着いた。
誰もいない教室。
窓が少しだけ開いていた。
どこから吹くのか、冷たい風が吹いている。
窓の隙間風の音が響いていた。
バックを置いて、音のする方に向かってみた。
それは、教室の廊下だった。
「あ。」
そこには誰もいないと思っていた。
廊下に1人女子生徒が
風が吹いているのに気づいて
窓を閉めていた。
思わず、雪の声が出た。
「……。」
サラサラのセミロングの髪が靡いた。
シャンプーのいい匂いが漂う。
香りは前と変わりない。
「お、おはよう。」
雪が先に声をかけた。
隣を通り過ぎて、また無視されたかと思った。
がっかりしていると、後ろから桜の声がする。
「雪、髪色、戻したんだね。」
振り返って、桜の方に体を向けた。
やっと話してくれた。
両手を後ろに組んで笑顔で話していた。
「う、うん。そう、今日風紀委員だから。」
「おはよう。」
時差があるのか。今、挨拶している。
「あ、うん。おはよう。」
「そうやって、今日だけ色変えないで
ずっと黒でいればいいのに。
似合ってるから。」
「……まぁ、好きでやってるからさ。」
「いいじゃない?
高校生活楽しんでるみたいで。」
「お、おう。」
「雪、あのね。私、明日からいないから。」
「え?」
雪は、桜の言葉に絶句する。
どういうことか理解できなかった。
「私と瑞希、
いやもう、綾瀬家は引っ越すことに
なったんだ。
最後にこうやって、2人で話せてよかった。
部活の顧問の先生産休で変わっちゃってさ。
朝練してきたんだ。
よりもよって、引っ越す前に…。」
雪は、話を終えない桜の華奢な体を
不意に抱きしめた。
「俺、こんな身なりして、
変な行動しているけど、
ずっとずっと、桜のこと好きだから。
嫌いになったりしたことない。」
「……。」
桜は別れようと言ったのは雪なのに
今更そんなこと言われても信じられなかった。
でも、抱きしめるという現実は受け止められた。雪の背中をヨシヨシと撫でた。
「ありがとう。」
保護者のような言い方の感謝だった。
気持ちはさっぱりしていた。
遅かったかもしれない。
その言葉を交わして、桜と瑞希は
翌日に引っ越して行った。
どこへ引っ越すとか瑞希と
別れの言葉を交わすことなく、
時間は忙しくすぎていった。
亜香里とつきあっているということもあり、
あまり大きな行動もできなかった。
それが高校2年の秋の話だった。
というより、ほぼ眠れなかった。
インナーカラーに変えた髪を地毛に近い
黒髪に戻した。今日は風紀委員の日で髪色はもちろん、ピアスのチェックもある。
左右どちらも3つもあけていた。
ずっとつけていたピアスを丁寧に外して、
辞書や参考書が入ってるカラーボックスの上に置いた。
その横には、亜香里に渡されていた
ピンクの蝶々の施されたパッケージのゴムが
あった。
昨年の自分には考えられない行動の数々に
自分自身で驚いている。
こんなキャラクターだったかなと思い返してみても、違うんじゃないかと疑う。
そして、今は黒髪で過去に逆戻りして
まるでタイムスリップしたようだ。
今の格好なら、この姿なら、
桜に会った時、何か反応してくれるんじゃないかと淡い期待を思い浮かべる。
前と違う学生カーストが上層部だからって内面はそんなに変わってないと思っている。亜香里と交際しているというが、本当に好きかどうかなんてわからない。恋愛の進展なんて深いところまでわかっていても、亜香里に対して雪自身は本当の自分を知らないくせと皮肉れていた。
登校したことない時間に教室に着いた。
誰もいない教室。
窓が少しだけ開いていた。
どこから吹くのか、冷たい風が吹いている。
窓の隙間風の音が響いていた。
バックを置いて、音のする方に向かってみた。
それは、教室の廊下だった。
「あ。」
そこには誰もいないと思っていた。
廊下に1人女子生徒が
風が吹いているのに気づいて
窓を閉めていた。
思わず、雪の声が出た。
「……。」
サラサラのセミロングの髪が靡いた。
シャンプーのいい匂いが漂う。
香りは前と変わりない。
「お、おはよう。」
雪が先に声をかけた。
隣を通り過ぎて、また無視されたかと思った。
がっかりしていると、後ろから桜の声がする。
「雪、髪色、戻したんだね。」
振り返って、桜の方に体を向けた。
やっと話してくれた。
両手を後ろに組んで笑顔で話していた。
「う、うん。そう、今日風紀委員だから。」
「おはよう。」
時差があるのか。今、挨拶している。
「あ、うん。おはよう。」
「そうやって、今日だけ色変えないで
ずっと黒でいればいいのに。
似合ってるから。」
「……まぁ、好きでやってるからさ。」
「いいじゃない?
高校生活楽しんでるみたいで。」
「お、おう。」
「雪、あのね。私、明日からいないから。」
「え?」
雪は、桜の言葉に絶句する。
どういうことか理解できなかった。
「私と瑞希、
いやもう、綾瀬家は引っ越すことに
なったんだ。
最後にこうやって、2人で話せてよかった。
部活の顧問の先生産休で変わっちゃってさ。
朝練してきたんだ。
よりもよって、引っ越す前に…。」
雪は、話を終えない桜の華奢な体を
不意に抱きしめた。
「俺、こんな身なりして、
変な行動しているけど、
ずっとずっと、桜のこと好きだから。
嫌いになったりしたことない。」
「……。」
桜は別れようと言ったのは雪なのに
今更そんなこと言われても信じられなかった。
でも、抱きしめるという現実は受け止められた。雪の背中をヨシヨシと撫でた。
「ありがとう。」
保護者のような言い方の感謝だった。
気持ちはさっぱりしていた。
遅かったかもしれない。
その言葉を交わして、桜と瑞希は
翌日に引っ越して行った。
どこへ引っ越すとか瑞希と
別れの言葉を交わすことなく、
時間は忙しくすぎていった。
亜香里とつきあっているということもあり、
あまり大きな行動もできなかった。
それが高校2年の秋の話だった。