死神に恋した私

他人

 1度、みんなから視線を離してみてみよう。澪はそう意識し始めた。すると、 徐々に見えてきてしまった。
 何か澪が話せば、場は自然と静かになる。でも、澪が話さなければ、場は盛り上がる。その内容はいつも、友奈が中心だった。
「ちょっと幸菜聞いて〜?昨日さ、やばい人にLINE交換させられちゃった〜」
「は?!まじ?アンタ可愛いから気を付けてよ!」
 このことを言われるのが好きな友奈は満足そうに笑った。そして、澪に視線を勝ち誇ったかのように向ける。 そのことに感づいたのだ。いつもならここで、「ブロックして見なければ終わるじゃん?」
 と言うと、幸菜が反論する。
「友奈は優しいからそういうの出来るわけないじゃん!」
 バカバカしいと澪は視線を逸らすと、どんまいと口パクで、七緒(なお)が声をかけてくれた。
 七緒は唯一の澪の友人であった。
 ある時、澪は七緒と二人っきりになった。そのタイミングで、彼女は相談した。
「最近さ、友奈って私にあたり強くない?」
「ん〜…た、確かに…」
「嫌われてるのかな」
「そんなことは無いよ!」
 無責任にもそう言う。だが、澪は「そっか、ありがとう」というしか無かった。
「私って、グループの友達じゃないんだ」
 そう気付いた。
 私はあの子たちにとっては友達じゃない。
そうわかった澪は行動に移すことにした。何をするのか。それは、会話は澪が中心になることが多かった。だからこそ、敢えて無言で居たり、敢えて、友奈と仲良くできるように、澪から遊びに誘った。
「新宿にイルミネーション見に行こ!」
 恋人たちの聖夜に、2人で出かけた。
 イタリアンを食べて、ショッピングに行きたいと言われたから、ビルに入った。何か、珍しいお店でも行くのか。そう思っていると、
「友奈、ジェルネイル欲しい!」
 と、薬局に来た。少し戸惑いながらも、「澪選んで!」と言われたので、似合いそうなのをチョイスする。次は澪の番か、と1番目立つ、観覧車に乗りたい と言うと、友奈は明らかに嫌そうな顔をして、
「友奈、あれヤダ」
 と断り、次に行きたいところを言った。
「自分で調べないの?」
 はなから澪は、マップ係をする気は無い。だから、友奈は自分で調べ始めたが、上手くいかず、
「澪調べてよ!一緒に遊んでるんでしょ?!」
 と八つ当たりした。
 澪は諦め、スマホを取りだしてマップを開いた。
「そっか、ごめんね」
 澪はこっちだよ、と導いた。友奈は満足そうに笑っていた。
 しかし事件は起こった。イルミネーションが始まる5分前、事前に澪は友奈に言ってあった。
「遠出してるから、門限厳しいの。1時間くらいしか入れないけれど、いい?」
 友奈は快く、「うん!」と返事した。ほっとした澪はイルミネーションを楽しみ、電車に乗ろうと入口を探した。そして、地下への階段を降りていると、隣に友奈が居なかった。
「友奈?!」
 気付けば友奈はイルミネーションへと戻っていた。「どうしたの?」
 と聞くと、友奈は手を振って澪を突き放した。
「友奈、澪とイルミ見ても楽しくない」
 誰が今日のショッピングを案内したのか。それを思うと澪は怒りが込み上げてきたが、相手に怒れる度胸もなく。
「そっか、気をつけてね」
 優しく友奈に言うしか無かった。
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