色褪せて、着色して。~沈丁花編~

ケッコン


「国王が、ご結婚なさいました」






 その日、私はいつものようにピアノの練習をしていた。
 侍女であるバニラが血相変えて部屋に飛び込んで言ったのだ。
 私は驚いて立ち上がった。

 バニラは燃えるような赤い瞳で心配そうに私を見つめる。
「・・・そっか」
 弱く答えたつもりだけど。
 目の前にある楽譜はふにゃふにゃとぼやけていった。










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