色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 私が人生最大に愛した男はヒューゴという、高校の同級生だった。
 愛したところで、裏切られる…という行為をされたときの。
 傷は一生、消えることはない。
 時折、ヒューゴとヒューゴの婚約者であるアミラの顔が、ぽっと頭に浮かんでは。
 強いほどの憎しみを覚える。

 太陽様は、マッチョで。
 騎士としては致命的な優しさを持っていて。
 ちょっと天然なところがあるけど。
 一緒にいると、凄く幸せになることが出来る。

 でも、好きになったところで。
 彼は私を好きになってはくれない。
 それは、絶対にわかっているから。
 苦しい恋愛はしたくない。
「私は悪いやつでいいや」
 ぽつりと、言うとバニラが眉間に皺を寄せて、「何故です?」と言った。

「今は、男にちやほやされていたいから。恋愛はまだいい」

 とんでもない発言かもしれないが。
 バニラはじっと私を見て、ふふふと笑った。
 私の言うことが本心でないことを知った上での微笑みだろう。
「マヒル様は絶世の美女ですからね。楽しんでください」
「うん。王族からも嫌われてるし、私らしく男に囲まれて生活するわ」
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