色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 翌日、バニラは荷物をまとめて。
 旅行にいく準備を進めた。
 外出届…なるものをどこに提出して受理されるんだ? と思ったけど。
 そこはバニラがご近所付き合いのあるカスミ様に聴きに行って色々とレクチャーを受けたようだ。
 カスミ様はバニラの言うことにビックリして「私、勝手に外出してたわー」と爆弾発言していたそうだ。

 まあ、カスミ様と私たちとでは立場が違うわけだけど。
 相変わらず、マイペースなカスミ様にイラッとした。
「面倒臭いので、王妃様に宛てて提出しておきました」
 とケロっとした表情でバニラが言ったのでビックリする。
「届くかしら。王妃様のところまで」
「さあ? 別に届かなくても大丈夫ですわ。提出したという行為が大事ですから」
 と、不敵な笑みを浮かべたバニラに、ぞっとして。
 それ以上は聞かなかった。

 馬車一台と、護衛である騎士を一名用意してもらって。
 バニラは私を見る。
「何か困ったことがあったら、すぐにサンゴ様のところへ駆け付けてくださいね」
 サンゴさんというのは、村外れにすむ元騎士の男性だ。
 殺し屋のような顔をしているが、見かけによらず親切な人なのだ。
「わかった、わかった。バニラもゆっくり旅行しておいで」
 バニラは城下町や以前、住んでいた町に行ってみるそうだ。

「行ってらっしゃい」

 馬車がいなくなるまで、私は手を振り続けて。
 バニラを見送ったのだった。
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