色褪せて、着色して。~沈丁花編~

キョヒケンハ、ナイノダ。

 はじめから、ハメられたな。
 と気づいたときには、もう遅いわけだ。
 いつも問題が起きる時、絶対に太陽様は遠ざけられる。
 それは、彼が国家騎士団に所属している限りは避けられないこと。

 今回は、上手いように私からバニラを切り離した。
 彼女が今回のことを知ったら、激高しただけではすまされない。
 それこそ、祖国スカジオン王国が動いて。
 この国を破滅に導いたはずだ。
 禁忌を冒して、魔法を導入したかもしれない。
 モンスターにこの国を食わせるかもしれない。

 他国では、魔法が使える。
 魔力を持つ人間がいる。
 文明だって、進んでいる。
 なのに、この国は魔法が使えないどころか、
 文明が止まっているように見える。

「ここから乗客に紛れ込めば大丈夫です」
 キャビンアテンドさんの言葉に静かに頷いて。
 ウィッグをはずした。
 クリスさん達の説明を受けたらすぐに空港のほうへ移動という忙しいスケジュールだった。
 私は外見が目立つので。
 まずは騎士団の制服を着て男装するところから始まり。
 空港に着くと今度は空港で働く人達の制服に着替えて。
 社員登用口のほうへ紛れ込み。
 また着替えて。
 旅行者の格好になるという…変身するのは、ちょっとだけ楽しいなと思ってしまった。

 空港は勿論、入国審査所には国王からの圧力をかけて全面的に協力してもらっている。
 だけど、敵の方も入国審査所に協力者がいるはずなので。
 バレないように入念に手筈を整えなければならなかった。
< 23 / 74 >

この作品をシェア

pagetop