色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 目の前には2人の男が立っている。
 てっきりガラの悪い人達が話しかけてくるんだろうと思っていたのに。
 目の前には20代前半…同い年だろうか?
 真っ黒なスーツを着た男が立っていた。
 背は170cmくらい・・・ビックリするのは誰かさんに雰囲気が似ていた。
「えっと、エアーさん?」
「……」
 固まっていると。
 男は手のひらを私の前でひらひらとさせる。
「え・あ・あ? あなたはエアー?」
 我に返った私は首を縦に振った。
「言葉もしかして、わかんねえ?」
「す・・・すこしだけわかるダヨ」
 と、カタコトで言うと。
 男の後ろに立っていた背の高い男が「まじでうけんだけど!!」と言って。
 太ももに手のひらを叩きつけながら大笑いしている。
 話しかけてきた男はイケメンだけど。
 大笑いしている男は生理的に無理だと直感的に思った。
 スーツ姿は似合うこともなく。
 180cm以上の長身にウネウネした髪の毛。
 立派な口ひげがあって。
 おかめかよ…と突っ込みたくなるようなメイクをしていた。
 異常なくらいの白塗り、目尻に赤いアイライン。
 おかめじゃない…ピエロかもしれない。

「ま、とりあえず。行こうか」
 軽い口調で男が言うと。
 私が持っていたスーツケースを奪った。
「あっ」
 声を出したけど。
 男たちは無視して歩いて行く。
< 25 / 74 >

この作品をシェア

pagetop