色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 旧車だよな…と思うのは。
 私があまり車に詳しくないからだ。
 角ばった乗用車に乗り込むのだが。
 運転席にはピエロが乗ったので。
 イケメンは助手席に乗るのかと思っていたら。
 私と一緒に後部席に乗ってきた。
「ちょっとだけ走って」
「りょおかいっ」
 イケメンが命令口調で言うと。
 車はゆっくりと走り出した。
 …と思うと。
 5分ほどですぐに止まった。
 道路は一本道。
 脇に車を止めると。
 ピエロが「説明しちゃってえ」とオネエ口調で言った。

「どうも、はじめまして。俺の名前はトペニ。運転手の名前はロケット」
「と・・・ぺに?」
 発音が難しいので、オウム返しすると。
 ピエロことロケットがギャハハハと下品に笑い出した。
「エアーの国じゃ、俺の名前の発音難しいかなあ。トペニね。トペニ」
「とぺに…とぺに」
 私が繰り返し言うと笑顔でトペニが頷いた。
 こんな爽やかイケメンが犯罪組織の人間だとは、誰が思うか。

「んでね。エアー。ここからが重要なんだ」
 私が首を傾げると。
 トペニはポケットから何かを取り出した。
 ポケットサイズの瓶だった。
 瓶には錠剤が入っていて。
 一粒取り出すと。
 トペニは「はいっ」と言って私に渡した。
「これね、今。飲んで」
「あ?」
 私が睨んだのをミラー越しに見ていたロケットが「ぎゃははは」とまた笑った。

 風邪薬で飲むような白い錠剤だった。
「わかる? 口にいれて、ごっくん。オッケー?」
 トペニが身振り手振りで教えるが。
 私は脳内がフリーズして。
 考える力を失った。

 しょっぱなから、ピンチ。
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