色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 来るべきときがきた。
 ただ、それだけなのに。
 胸はざわざわするし、食欲が失せた。

 イライラしながら。
 指に力が入る。
 頭ではわかるのに、心が追い付かない。
 私は既婚者だし。
 どうなりたいってわけじゃないのに。
 ローズ様が結婚したと知って。
 ショックを受けている自分がいる。
 意味わかんない。

 国中がお祭りムード。
 国王と王妃の結婚式は各国の王族が招待されたそうだ。
 当然、祖国のスカジオン王国からも王族が招待されてやって来た。

 かつての幼なじみテイリーがやって来たそうだけれど。
 私は会わなかった。
 会ったら、頼ってしまいそうだったし、もう会わないと決めたから。

 バニラは本来の主であるテイリーに会いに行った。
 帰って来た時は、物凄く不機嫌だった。
「うまくやっているようですね、あの坊ちゃんは」
 と意味深な言葉を残して、それ以上は話さなかった。
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