色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 建物を出ると、トペニは中庭の中央にある木の下に立った。
「建物は見た通り全部で4つ。さっき会ったオバチャンのいる建物が南館。あそこは従業員…ま、俺達かなあ…が使用する建物。んで、さっきの事務所があってガキがギャーギャーしていたところが、西館で主にガキどもが寝泊まりするところ」
「……」
「で、こっちの北館が仕事するところだな」
 仕事…という言葉にドキリとしてトペニが見ている建物に目をやる。
「北館は主にベテランのネーチャンが仕事するところだから、エアーは入れねえよ。仮に入れるようになったとしても、気を付けろ」
「?」
 厳しい顔をされたので首を傾げると、トペニがぶっと吹き出すように笑った。
「競い合ってんだよ。一人一人が売れっ子になりたいって必死でさ。エアーは顔がいいからすぐに売れっ子になる」
「そうかな」
 と、口からポロリと出た言葉にトペニは、
「ま、性格悪くても。ここじゃ顔だからな」
 と余計なことを言ってきたのでイラッとした。
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