色褪せて、着色して。~沈丁花編~
「エアーが明日から仕事するところは、東館。おまえの活動場所」
「……」
トペニの言葉に帰りたいと心底思った。
だが、顔に出すわけにはいかない。
「ま、これで館内の説明は終わりだな。一旦、事務所に戻るぞ」
あまりにもざっくりとした説明に「え」と声を漏らしたが。
トペニは無視をして歩いて行く。
再び事務所に戻ると。
さっき居た真面目そうな社員さんの姿はなく。
誰も居なかった。
「適当に座って」
とトペニに言われたので。
椅子に座ると。
トペニも隣に座った。
「ここまでで、何か質問は?」
「…私のような新人に指導者は付くのか?」
「指導者!? 難しい言葉知ってんな」
トペニが驚いたような顔をする。
近くで見ても、やっぱりマリアちゃんに似たイケメンだ。
大きな目にしゅっとした輪郭。
ウルフカットな髪型。
適度に鍛えられた体型に。
女性慣れした口調。
チャラいなあ…と同時に。
自分の国では、いたなあ~こんな人達…と思い返す。
「あのさ。エアーさんよ。大事なこと言うの忘れてた」
「……?」
「ここはな、女の子同士が仲良くなるところじゃねえよってこと」
「うん?」
首を傾げたままトペニを見る。
「さっきも言ったけど。ネエチャンの中には勝手にライバル視して暴走するやつもいるんだよ。喧嘩に嫌がらせ。客の奪い合い…。面倒くせえだろ、そういうのって」
「……」
「だからさ。基本は『ぼっち』なわけ」
「ぼっち…? ぼっちって何?」
「ぼっちというのは。一人ぼっちのぼっち。他の姉ちゃんと行動することはない」
ふーん…と思いながら。
トペニを見た。
「ここは、娼婦が何人くらいいる?」
4つもの建物があるのだから少人数ではなさそうだ。
「さあな。俺は把握してない」
珍しくトペニの目が泳いだのを見逃さなかった。
ここはチャンスだとばかりに質問をしてしまおう。
「私みたいな外国人は多いのか?」
「さあー。どうだろうな。海外の子は最近ちょっとずつスカウトして来てもらってるからな」
と、とぼけたようにトペニが言った。
「年齢は何歳でもいいのか?」
私の質問に、トペニはぎょっとした顔をした。
「もしや、おまえ。妹がいて連れてきたいとか思ってるのか?」
「ちがうちがう。さっき子供たち遊んでいる声、聞こえた。だから」
慌てて答えるが。
トペニはじい…と私を凝視する。
私が何かを隠していると思ったのだろう。
「勘違いすんなよ。ここは託児所じゃねえ。一番小っこいので、10歳とかだったな」
「10歳・・・? 10歳で・・・」
絶句すると。
トペニはニタニタと笑い出した。
「それ以上は追求しないほうがいいだろ」
自分で質問しておいて、私はとんでもないくらいに傷ついた。
「……」
トペニの言葉に帰りたいと心底思った。
だが、顔に出すわけにはいかない。
「ま、これで館内の説明は終わりだな。一旦、事務所に戻るぞ」
あまりにもざっくりとした説明に「え」と声を漏らしたが。
トペニは無視をして歩いて行く。
再び事務所に戻ると。
さっき居た真面目そうな社員さんの姿はなく。
誰も居なかった。
「適当に座って」
とトペニに言われたので。
椅子に座ると。
トペニも隣に座った。
「ここまでで、何か質問は?」
「…私のような新人に指導者は付くのか?」
「指導者!? 難しい言葉知ってんな」
トペニが驚いたような顔をする。
近くで見ても、やっぱりマリアちゃんに似たイケメンだ。
大きな目にしゅっとした輪郭。
ウルフカットな髪型。
適度に鍛えられた体型に。
女性慣れした口調。
チャラいなあ…と同時に。
自分の国では、いたなあ~こんな人達…と思い返す。
「あのさ。エアーさんよ。大事なこと言うの忘れてた」
「……?」
「ここはな、女の子同士が仲良くなるところじゃねえよってこと」
「うん?」
首を傾げたままトペニを見る。
「さっきも言ったけど。ネエチャンの中には勝手にライバル視して暴走するやつもいるんだよ。喧嘩に嫌がらせ。客の奪い合い…。面倒くせえだろ、そういうのって」
「……」
「だからさ。基本は『ぼっち』なわけ」
「ぼっち…? ぼっちって何?」
「ぼっちというのは。一人ぼっちのぼっち。他の姉ちゃんと行動することはない」
ふーん…と思いながら。
トペニを見た。
「ここは、娼婦が何人くらいいる?」
4つもの建物があるのだから少人数ではなさそうだ。
「さあな。俺は把握してない」
珍しくトペニの目が泳いだのを見逃さなかった。
ここはチャンスだとばかりに質問をしてしまおう。
「私みたいな外国人は多いのか?」
「さあー。どうだろうな。海外の子は最近ちょっとずつスカウトして来てもらってるからな」
と、とぼけたようにトペニが言った。
「年齢は何歳でもいいのか?」
私の質問に、トペニはぎょっとした顔をした。
「もしや、おまえ。妹がいて連れてきたいとか思ってるのか?」
「ちがうちがう。さっき子供たち遊んでいる声、聞こえた。だから」
慌てて答えるが。
トペニはじい…と私を凝視する。
私が何かを隠していると思ったのだろう。
「勘違いすんなよ。ここは託児所じゃねえ。一番小っこいので、10歳とかだったな」
「10歳・・・? 10歳で・・・」
絶句すると。
トペニはニタニタと笑い出した。
「それ以上は追求しないほうがいいだろ」
自分で質問しておいて、私はとんでもないくらいに傷ついた。