色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 ふぅぅ…と深呼吸をする。
「あなたたち、悪人」
「なんだよ、急に」
「私の国だったら捕まる。何故、あなたたち捕まらない?」
 この囮捜査にて。
 核心を突いた質問だ。

 国王がイライラしながら、
 騎士団たちに吠えて怒っていたけど。
 何が原因だというのか。
 トペニは疑わしい目で、私を見た。
 ちょっと核心に迫りすぎたのかも。
「私、せっかくここまで苦労して来た。警察、つかまりたくない」
「ああ。まあ、そうだよな。ちなみにこの国に警察はいねえんだ。エアーの言う警察的な奴らっていうのは、この国は騎士団っていうんだ」
「キシダン? 警察じゃないから、捕まらないのか?」
 わざと、おバカなふりをするのも慣れてしまった。
 最初は、なんでそんなことを訊くのか…という目をしていたトペニだったが。
 私が遠路はるばる一人でやってきた心細さを理解したのか。「そうだな」と一人納得して言葉を選んでいるようだ。
「ここはな。マスターがいるんだ。マスター…会社でいえば社長かな」
 マスターと社長って、同じ意味合いに使っていいのかと疑問に思ったけど。
 とりあえず、頷いた。
「マスターは貴族でな。んで、マスターの両親が王族と繋がりがあるから、絶対に捕まんないだってよ」
「うん?」
 首を傾げると、トペニは「ははは」と渇いた笑いを漏らした。
「意味わからないか? まあ、とにかく大丈夫だって。だいたい、この国じゃ娼婦の仕事をさせている奴らなんて沢山いる」
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