色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 まとめると。
 この娼婦館が捕まらない理由は2つあって。
 一つは、オーナーがやんごとなき貴族の人間であり王族とのつながりがある。
 もう一つは、誘拐と言う事実はなく、悪魔でも本人の意志で娼婦という仕事をしている。
 だから、訴えられることはない…と。

 そもそも、この国で女の子たちに娼婦をさせている店なんて沢山あるから。
 うちだけが捕まるわけない…とトペニはあっけらかーんと言っていた。

 なんなんだ。
 この国は。
 平和で、裏社会のない国だとばかり思っていたのに。
 汚れた部分を見てしまって、ショックを受ける。

 国王が何を考えているのかわからない。
 去年までは、一緒に干し芋を食べたり、薔薇園を優雅に散歩していた仲だというのに。
 あの人は、自分の立場を考えて私を囮にした。

 私が寵姫という噂を捻じ曲げるためには、娼婦として送り込むしか方法がなかったのかもしれない。
 そうすれば、もう二度と彼には会わないだろうし。
 完璧主義のお妃さまや、あのムカつく侍女のトラトラとも一生会わずに済む。

 戻れたとして。
 もう一生、王家と関わりを持たずに生きていくのかな。
 そう考えると。
 ちくちくと胸が痛む。
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