色褪せて、着色して。~沈丁花編~
「俺は、地方だけど騎士団に所属してたんだからな」
 黙ったかと思えば。
 急にトペニが語りだしたので。
 私は目をぱちぱちさせた。
「きしだん?」
「そう。だから俺は強い」
 別に私は弱いだろと決めつけてはいないのに。
 トペニは「強い」と言い切った。
「見ろよ。あそこの。事務所で見たあの真面目そうな奴。あいつ、武器なしでも相当強いんだからな」
「ふーん」
「信じてねえだろ? 半年前までエリート騎士だったんだぜ」
「えりーと…」
 扉の前で何をするでもなく、じっと立つ事務所の男。
 ふと、クリスさんが言っていた言葉を思い出す。

「敵の中に俺達側の人間が紛れ込んでるから」

 予定では、私の最初の客となる人も。
 国家騎士団の人間にすると言っていたけど。
 あの人が味方?

「なんでエリートがこんなところにいるかって顔してんな」
「……」
 別にそんなこと1mmも考えていないのだが。
 トペニは喋りたいようで、ニヤリと笑った。
 意外とこの男はお喋りなようだ。
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