色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 仮眠を取った後。
 軽食を食べて。
 シャワーを浴びた後。
 胸元が強調された白いネグリジェに着替えさせられ。
 化粧師と呼ばれるオバさんに化粧をしてもらうことに。
 化粧をしてもらいながら。
 後ろでトペニが説明をしてくれている。
「時間になったら、客が来る。初めての客だから慎重にもてなせ」
「……」
 そんなことを言われても無理に決まってるだろ。
 顔に出てしまっているのか、オバさんに
「そんな顔をしたら、化粧する私が可哀想だ」
 と怒られてしまった。
 そこまで、言われちゃうのか。

 出来上がった厚化粧は、ロケットのピエロメイクが脳裏に浮かんだ。
「化粧、濃くない?」
「あったりまえだ! 夜なんだから、あえて濃くしてやってんだ」
 とオバさんに怒られてしまう始末…。

 提灯に火を灯すと。
 いよいよ、仕事が始まろうとしている。
 部屋でそわそわしているうちに。
「お客さんだよ」
 と、(ふすま)越しに声をかけられる。

 心臓のバクバクは頂点に達している。
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