色褪せて、着色して。~沈丁花編~
マタ、ヨビダシ
立ち上がって。
さて、ピアノの練習でもするかと思った時。
バニラが物凄い勢いで玄関のほうを見た。
「マヒル夫人、おられますかー?」
男性の声だ。
この声に聞き覚えがある。
嫌な予感がしながらも。
バニラが玄関のドアを開けた。
「マヒル夫人、ご同行願えますか?」
今、会いたくないうちの一人であるクリス様が立っている。
「何の御用ですか?」
と、冷たく言うと。
クリス様がバニラのほうをちらりと見た。
どうやら、極秘内容らしい。
やれやれ…とため息をつくと。
「ちょっと、出かけてくる。バニラはゆっくり休んでて」
と言って外に出た。
家に帰ってのんびり出来るかと思ったのに。
また、呼び出しをくらう。
馬車に乗ると。
目の前に座っていたクリス様が、
「申し訳ありません」と頭を下げた。
「クリス様、さすがに今回は私が謝らなきゃいけませんね。昨日はクリス様に当たり散らしてごめんなさい」
先に謝っておかなきゃ。これからクリス様と顔を見合わせるのがきつくなると思った。
クリス様は目の下に隈ができていて、顔色が悪い。
「今回のおとり捜査は腹が立ちましたけど。この国を滅ぼしたりしませんから、安心してください」
「……」
黙り込んでしまったクリス様。
馬車はすみやかにどこかへ向かっている。
「ところで、今回もまた国王が呼び出しているんですか?」
「いや…今回はある男が貴女を呼んでいるんです」
「ある男?」
クリス様は、ふぅ…と小さくため息をついた。
「とおぺ・・・失礼。発音が難しいので。トペニという男です」
「へ?」
さて、ピアノの練習でもするかと思った時。
バニラが物凄い勢いで玄関のほうを見た。
「マヒル夫人、おられますかー?」
男性の声だ。
この声に聞き覚えがある。
嫌な予感がしながらも。
バニラが玄関のドアを開けた。
「マヒル夫人、ご同行願えますか?」
今、会いたくないうちの一人であるクリス様が立っている。
「何の御用ですか?」
と、冷たく言うと。
クリス様がバニラのほうをちらりと見た。
どうやら、極秘内容らしい。
やれやれ…とため息をつくと。
「ちょっと、出かけてくる。バニラはゆっくり休んでて」
と言って外に出た。
家に帰ってのんびり出来るかと思ったのに。
また、呼び出しをくらう。
馬車に乗ると。
目の前に座っていたクリス様が、
「申し訳ありません」と頭を下げた。
「クリス様、さすがに今回は私が謝らなきゃいけませんね。昨日はクリス様に当たり散らしてごめんなさい」
先に謝っておかなきゃ。これからクリス様と顔を見合わせるのがきつくなると思った。
クリス様は目の下に隈ができていて、顔色が悪い。
「今回のおとり捜査は腹が立ちましたけど。この国を滅ぼしたりしませんから、安心してください」
「……」
黙り込んでしまったクリス様。
馬車はすみやかにどこかへ向かっている。
「ところで、今回もまた国王が呼び出しているんですか?」
「いや…今回はある男が貴女を呼んでいるんです」
「ある男?」
クリス様は、ふぅ…と小さくため息をついた。
「とおぺ・・・失礼。発音が難しいので。トペニという男です」
「へ?」