色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 また、謁見の間かあ…
 と、憂鬱になりながら。
 私とトペニは立っている。
 もはや、しゃがみ込む気力なんてない。

 広間の両脇では、ざわざわと私とトペニを見て騎士たちが騒いでいる。

「静粛に」

 ぴたりと静かになったかと思うと。
 現れた国王と王妃に空気が一瞬で変わる。

 私は深呼吸をすると。
 王様を見た。
 この前会ったときは、きらびやかな格好だったけど。
 今回は緊急招集だったから普段見慣れている騎士の服装だ。

「王様、この男を私にください」
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