色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 何を言っているんだ…。
 罪人だぞ…。
 ざわざわ、ざわざわ。
 黙っていたはずの騎士たちが騒ぎ出す。
 国王の隣に座っていた王妃は「まあ」と声を出して、どこか楽しそうに私を見ている。

「おとり捜査に協力した私に褒美をください」

 私は頭を下げた。
 隣にいたトペニは両手を手枷で拘束されていて。
 こっちを見ている。

「いいだろう」

 上から降ってきた国王の言葉に。
 また、ざわざわと騎士たちが騒ぎ出す。
 すぐに国王と王妃がいなくなると。
 私はその場に座り込んだ。
 …威圧感半端ない。

「おい、お姫さんよお。同情なんかいらねえよ」

 隣にいたトペニの言葉にカチンと頭の中で音が鳴る。

「うっさいわ」
 私はトペニを睨みつける。
「私はあんたに同情なんかしたつもりなんてない。あんたはね、自分でやろうとしていることは人に押し付けずに最後まで自分でやり遂げなさいよ」
 ふんっ! と鼻で笑ってやった。
 言ったのはいいけど。
 私はこの後、どうすればいいのか何一つ考えていなかったのだ。
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