色褪せて、着色して。~沈丁花編~
「いきなりごめんなさい。何も訊かずに、この男を一週間…いや3日でいいのでこの家に置いてくれませんか?」
 久しぶりに訪れて、私が無理難題を押し付けたので。
 流石にサンゴさんとカイくんは呆れ返っていた。

 サンゴさんは元騎士で。
 戦争で右腕を失って、騎士団を退団して。
 今はカイくんという14歳の少年と2人で王族の領地である村で暮らしている。
 見た目はいかつく、殺人鬼のような怖い顔をしているが。
 実はとても優しい人なのだ。
「どうする? カイ」
 サンゴさんはカイくんに訊いた。
 カイくんはトペニを見て。
 すぐにサンゴさんの後ろに隠れた。

「ちいーす! お世話になります」

 まだ了承を得ていないというのに。
 トペニはニコニコしながら2人に挨拶する。
 その明るいキャラクターに2人はドン引きの表情を出す。
「どうも、トペニっていいます。よろしく。よろしくぅー」
 と言ってサンゴさんを見て。
「あれ? 隻腕なんすねー。義手しないんすか?」
 と、初対面だというのに。
 とんでもなく失礼なことを言ったので。
 私は「ぎゃー」と叫んでしまった。

 私が叫んでいる間に。
 今度はカイくんを見て。
「おい、坊主。そのスケッチブックはなんだ?」
 と言って一瞬のすきをついてカイくんからスケッチブックを奪って。
 中身をパラパラと見た。
「坊主、もしかして。喋れねえのか?」
 私は再度、「ぎゃー」と叫んで。
 トペニからスケッチブックを奪ってカイくんに渡した。

「本当に失礼な奴でごめんなさい。何でもいいから働かせてやってください。それじゃ、宜しくお願いします。失礼します」
 と言って私は一目散に逃げ出した。
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