色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 ああ・・・。
 疲れたよ。

 帰宅すると。
 ソファーにバッタリと倒れ込んだ。

 ピアノの練習をしなければと思うけど。
 気力が残っていない。
 疲れたんだよー。
 私はもう、休みたいんだよお。
 どうして次々と事件が起こるかなあ。

「頭がおいつかない」

 ぽつりと独り言が出た。
 今更になって。
 自分のやったことは正しいのかとさえ思った。
 この国のルールなんて知ったこっちゃないけど。
 始末した・・・
 クリス様の言葉で胸が切り刻まれそうになった。

 始末って、あの始末だよね。
 トペニを救ったところで。
 何か変わる?
 何が出来るっていうんだろう。
 でも、ああするしかなかった。
 そうしなきゃ、トペニが始末されて…。
 そして、あの娼婦館の子たちも…。

 考えたくない。
 もう、いい。

 立ち上がると。
 真っ先にピアノの前に座って。
 一心不乱にピアノを弾き続けるしかなかった。
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