色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 勿論、ローズ様の寵姫なんて真っ赤な嘘。
 そもそも、私が会いたいと思ったところでローズ様になんて会えないし。
 ここ一年、顔を見合わしてすらいない。
 今までは簡単に会えていたけど。
 国王なのだ、あの人は。
 私とは住む世界が違う。

「行きたくないわあ…」
 手紙を見て、嘆くしかない。
 相手は王妃様。
 断ることは出来ない。
 頭の中でぐるぐると会ったときのことを想像してしまう。
 いきなり殺されたらどうしよう…とか意地悪されたらどうしようとか。
 国に帰れなんて言われたら、どうすればいいんだろう。

 固まった状態であれこれ考えていたら。
「大丈夫ですわ、マヒル様!」
 明るい声でバニラが言った。
 バニラの赤い瞳の奥がメラメラと燃えている。
「マヒル様に何かあったら、わたくしこの国を滅ぼす覚悟でいますから」
「…可愛い顔して、怖い事言わないで。ね、お願いだから」
 最近、私はこの世で最強なのはバニラじゃないかと思っている。
 彼女は人間じゃない、妖精なのだ。
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