色褪せて、着色して。~沈丁花編~
 いきなり帰ってきた太陽様は。
 寝不足なのか目の下に隈を作って、顔色が悪そうだった。
 白い顔で、立っている太陽様に。
 私はじっと太陽様を見つめることしか出来なかった。

 バニラはこの状況を黙って見ている。
「それは、あの件があるからですか」
 小さな声で言うと、聞こえなかったのか太陽様はまっすぐと私を見る。
 この人は、いつも唐突だ。
 今日に至っては()スレートな言葉でしかない。

「俺の側にいる女性は不幸になるんです」

 身長はほぼ私と変わらないくらい。
 制服着ているけど、バキバキマッチョというのはすぐにわかる。
 特徴のある尖った耳。
 大きなリスみたいな目でこっちを見て真剣なのがわかる。

 夫婦だというのに、ろくな会話をしてこなかった。
 政略結婚というのもあったから。
 普段、太陽様は国家騎士団として国を守っていてほぼ家にいることはない。
 国に戻って来たとしても、彼は騎士団の寮に寝泊まりしている。

 結婚というのは名前ばかりの存在だけど。
 この一年、私は太陽様と過ごした日々をとても嬉しく思っていた。

 この関係がずっと続きますように。
 そう、願っていたはずなのに…。
 無理なようだ。

 はあ…と深いため息をついて。
 太陽様を睨みつけた。
「離婚はしません」
「・・・・・・」
「あと、私を勝手に不幸だと決めつけないで」
 下品になってしまうかもしれないが、
 私は人差し指で、太陽様を指さした。
「私が幸せかどうかは、私が決めます」
「・・・・・・」
 表情変えずに無表情な太陽様を見て本気でむかついた。

「太陽様のばーーーーか!」

 足は勝手に動いていた。
< 61 / 74 >

この作品をシェア

pagetop